選挙が近いわけでもないのに、駅前や住宅街の塀に政治家の顔写真のポスターが貼ってある。あれは何なのか。
有権者として不思議に思ったことがある方もいらっしゃると思いますし、これから出馬される方にとっては、自分もあれをやるべきなのかという実務の問題になります。
結論から言うと、あれは選挙運動ではなく「政治活動」です。 そして貼れるのには、きちんとした仕組みがあります。
原則は「禁止」です
まず押さえていただきたいのは、候補者本人の氏名や、氏名が推測できるものを表示したポスターは、原則として掲示できないということです(公職選挙法143条16項)。
「政治家の顔写真ポスターは自由に貼れる」わけではありません。原則禁止で、例外として認められる形があるだけです。
その例外のひとつが、演説会や講演会の告知用ポスターです。街で見かけるポスターの多くは、この形をとっています。
「からくり」はここです
あのポスターは、演説会の告知という体裁で貼られています。
政党や政治団体が主催する演説会・講演会があり、そこに弁士として誰々が出ます、という告知。その告知ポスターに、地元の候補予定者が並んで載っている。 これが仕組みです。
だから多くのポスターには、日時と場所が小さく書かれています。 見たことがあるかもしれません。あれは飾りではなく、ポスターが合法である根拠そのものです。
そして、なぜ2人並んでいるものが多いのか。そこが単独・2連・3連の話になります。
単独・2連・3連の違い
| 種類 | 載る人 | 位置づけ | 掲示できる期間 |
|---|---|---|---|
| 単独ポスター | 本人だけ | 個人の政治活動用ポスター | 短い |
| 2連ポスター | 本人+弁士1人 | 政党・政治団体の演説会告知 | 長い |
| 3連ポスター | 本人+弁士2人 | 同上 | 長い |
いちばんよく見かけるのが2連です。 国会議員や党の幹部と、地元の候補予定者が並んでいる、あの形です。
なぜ2連・3連が主流なのか
長く貼っていられるからです。
単独ポスターは「個人の政治活動用ポスター」の扱いになり、制限が強くかかります。一方、政党や政治団体が主催する演説会の告知ポスターという形をとれば、より長い期間の掲示が認められます。
新人にとっては、もうひとつ効果があります。知名度のある弁士と並ぶことで、「この人は党の推す人なんだな」と伝わるということです。名前も顔も知られていない段階では、これが効きます。
3連は、地元の候補予定者と国会議員、さらに県議など、複数の階層を一枚に載せるときに使われます。
のぼりも、同じ形で作られています
この「演説会の告知」という形は、ポスターだけのものではありません。 駅立ちや街頭で立てているのぼりも、知名度のある弁士と本人が並んだ2連で、演説会の告知という体裁をとっているものが多くあります。
個人の名前を大きく出したのぼりは、政治活動では使えないとする選挙管理委員会の案内があるためです。装備まわりの詳細は市議選で当選する人がやっていることにまとめました。
実務上の注意
演説会告知用ポスターには、実務上いくつか押さえるべき点があります。
主催する政党・政治団体の名称を、大きく載せること。 面積の目安については、印刷業者や選挙管理委員会によって案内が異なります。
弁士を複数、対等に扱うこと。 片方だけが極端に大きい、という作りは避けられます。
演説会の日時と場所を記載すること。 これが告知ポスターである根拠です。
掲示責任者と印刷者の氏名・住所。 必須かどうかは形態によって扱いが分かれますが、入れておくのが無難です。
具体的な作りは、必ず管轄の選挙管理委員会にご確認ください。 自治体によって指導の細かさが違います。
なお、この形をとるには政党・政治団体との関係が前提になります。公認・推薦・支持の違いは政党の公認は取るべきかにまとめました。
いつまで貼っていられるのか
ここがいちばん大事なところです。
任期満了日の6か月前から選挙期日までの間、個人および後援団体の政治活動用ポスターは掲示できません(公職選挙法143条19項)。
すでに貼ってあるものも、撤去する必要があります(同201条の14ほか)。
| 時期 | 掲示 |
|---|---|
| 任期満了の6か月前より前 | 貼れます |
| 任期満了の6か月前〜選挙期日 | 貼れません(撤去が必要) |
| 選挙期間中 | 貼れません |
2027年4月の統一地方選挙なら、期限は2026年秋です
2027年4月の統一地方選挙が対象となる自治体では、任期満了日はおおむね2027年4月下旬から5月上旬にあたります。
その6か月前ということは、2026年10月下旬から11月上旬あたりが撤去の期限になる計算です。
つまり、いま貼ってあるポスターは、もう長くは貼っていられません。
ただし、任期満了日は自治体によって違います。 隣の市と自分の市で日付が違うことは普通にあります。必ず管轄の選挙管理委員会に、正確な日付をご確認ください。
撤去を忘れるとどうなるか
罰則があります。 公職選挙法243条により、2年以下の禁錮または50万円以下の罰金と定められています。
現実には撤去命令が出ることが多いのですが、選挙前のこの時期は、対立候補や有権者からの指摘が入りやすい時期でもあります。「知らなかった」では済まない話になります。
そして意外に難しいのが、貼った場所をすべて把握しておくことです。数百枚を貼っておいて、どこに貼ったか分からない、という状態になると、期限内に剥がしきれません。この管理については次の章で書きます。
実際には、期限を過ぎても貼られたままのものがあります
正直に書きます。撤去期限を過ぎても、貼られたままのポスターは実際にあります。 そして多くの場合、選挙管理委員会や警察に通報が入ってから、慌てて剥がしに行くという流れになります。
ただ、それを前提に動くのはおすすめしません。理由が3つあります。
通報は、たいてい対立陣営から来ます。 街のポスターを見て回って選管に連絡するのは、一般の有権者よりも、同じ選挙に出る側です。放っておけば見過ごされる、という話ではありません。
剥がしに行くのは、いちばん忙しい時期になります。 通報が入るのは選挙が近づいてからです。告示前の追い込みの時期に人手を割いて、貼った場所を思い出しながら市内を回ることになります。本来なら支援者回りや街頭に使いたい時間です。
指摘されたという事実が残ります。 「ルールを守らない候補者」という話は、選挙戦の中で使われます。金額に換算できない損です。
最初から場所を記録しておけば、この3つは全部避けられます。 期限の1週間前に、リストを見ながら順番に回るだけで終わります。
ポスターは、候補者が打てる手の中でいちばん届いています。数字はドブ板選挙と空中戦をご覧ください。
貼る場所の話
掲示には、土地・建物の所有者や管理者の承諾が必要です。
電柱、ガードレール、信号機、標識、街路樹といった公共物には貼れません。これは公選法以前に、道路法や屋外広告物条例の問題になります。
実務としては、支援者の家の塀や、店舗の壁を借りる形が中心です。だからこそ、貼らせてもらえる場所の数が、そのまま後援会の力を映すことになります。
貼りっぱなしにしない
ポスターは劣化します。
ユポ紙は屋外でも数か月はもちますが、日当たりの強い場所では色が飛びます。 特に赤系は落ちが早く、半年も経つと元の色とは別物になっていることがあります。雨と紫外線を毎日浴び続けるわけですから、当然といえば当然です。
問題は、それが誰の顔なのかということです。
色褪せて、端がめくれた自分の顔が街に残っている。 これは有権者から見ると、「この人は動いていない」という証明になります。何も貼っていないほうがまだよかった、という状態です。
ホームページの最新情報が2年前で止まっているのと、まったく同じ構造です。置いてあるだけのものは、放置の証拠になります。
貼り替えの目安
半年から1年を目安に、状態を見て回ってください。全部を一度に替える必要はありません。日当たりの強い場所と、風雨が直接当たる場所から傷みます。
見るのは3つです。色が飛んでいないか。端がめくれていないか。破れていないか。
そして、この点検には別の効果があります。回るついでに、一言お礼が言えます。 貼らせてくださっている方のところへ、年に一度顔を出す口実になります。ポスターの点検は、実は支援者回りでもあります。
貼った場所を、どう管理するか
多くの陣営がつまずくのが、ここです。
数百枚のポスターを、支援者の家の塀や店舗の壁に貼っていきます。貼るときは勢いで進みますが、問題は剥がすときです。
「あと何枚残っているのか」「誰の家に貼らせてもらったのか」が分からなくなります。紙の一覧やエクセルで管理しようとしても、貼る作業は複数の人が別々の日に動くので、更新が追いつきません。
そして撤去には期限があります。期限までに剥がしきれなければ、罰則の対象です。 貼るときの管理は、そのまま剥がすときの管理になります。
ポスター管理アプリ「ポスどこ」
提携先の当選・再選へGO!が、この問題のためのアプリを出しています。
GPS付きのカメラで掲示場所を記録し、チーム全員でリアルタイムに共有できます。 住所の登録からルート案内までアプリの中で完結しますので、「次はどこへ行けばいいか」を紙で共有する必要がなくなります。
- 貼った場所を写真と位置情報で記録
- チームで共有。誰がどこまで貼ったかが見える
- 住所の登録からルート案内まで
- 月額 10,000円〜
撤去のときも、同じデータがそのまま使えます。 貼った記録が、剥がすためのリストになります。「どこに貼ったか分からない」という状態を最初から作らないのが、いちばん確実な対策です。
詳しくはポスどこをご覧ください。ポスターのデザインとあわせてご相談いただけます。
ポスターを貼る作業も含めた日々の動きは市議選で当選する人がやっていることをご覧ください。
よくある質問
Q. ポスターを貼れば票が増えますか?
名前を覚えてもらう効果はあります。 ただしポスターだけで票が動くわけではありません。「見たことがある人」になるための道具とお考えください。選挙カー、ホームページ、SNSと組み合わせて初めて効いてきます。
Q. 何枚くらい貼るものですか?
自治体の規模によって大きく変わります。市議選であれば数百枚という規模が一つの目安ですが、枚数より場所の質です。人通りのある場所に10枚貼るほうが、人が通らない場所に100枚貼るより効きます。
Q. 前回の選挙で余ったポスターを、また使えますか?
年号や肩書きが入っていなければ、内容としては使えます。ただし保管していた分も、湿気や折れで傷みます。 数枚を差し替えるならともかく、まとまった枚数を貼るなら刷り直すほうが確実です。
Q. 撤去期限を過ぎたら、選挙まで何も貼れませんか?
個人の政治活動用ポスターは貼れません。 選挙期間に入れば、選挙運動用のポスターを選挙管理委員会が設置する掲示場に貼ることになります。これは別の枠組みです。
Q. 数百枚の貼り出しと撤去を、どう管理すればいいですか?
紙やエクセルでは、複数人が別々に動くと更新が追いつきません。写真と位置情報で記録して共有できるアプリを使うのが現実的です。提携先のポスどこ(月額10,000円〜)をご紹介しています。
Q. 弁士は誰でもいいですか?
演説会の実態が伴っている必要があります。 名前を借りるだけで演説会を開かない、という運用は避けてください。
Q. デザインで気をつけることは?
顔と名前が離れて見えても読めることです。ポスターは歩きながら、あるいは車から一瞬見られます。名前が読めなければ、貼っていないのと同じです。看板と同じ考え方になります。
Q. 看板とポスターで、写真は同じでいいですか?
同じにしてください。 ポスター、選挙カーの看板、ホームページ、SNS。すべてで同じ写真と同じ表記に揃えたほうが、覚えられます。 バラバラだと、同じ人だと認識されません。
ポスターの制作を承っています
えらぶカーでは、政治家の方向けのポスターデザインをお受けしています。
| 内容 | 料金(税別) |
|---|---|
| ポスターデザイン | 40,000円 / 枚 |
| 印刷 | まとめて承ります(印刷代は別途お見積り) |
| 選挙カーの看板(デザイン+4面印刷) | 120,000円 |
| 撮影(カメラマン同行) | 40,000円 / 日 |
山西が直接担当します。外注に丸投げはしません。
看板とポスターをまとめてご依頼いただくと、表記と写真を揃えられます。 別々の業者に頼むと、書体も色も写真も揃わないことがよくあります。有権者から見て「同じ人」に見えるかどうかは、思っている以上に効きます。
貼り出しと撤去の管理には、提携先のポスター管理アプリポスどこ(月額10,000円〜)をご紹介しています。 GPS付きの写真で場所を記録し、チームで共有できます。撤去期限のある作業ですので、最初から記録を残しておくことをおすすめします。
写真をお持ちでない場合は、撮影からお受けできます。 ポスター・看板・ホームページ・SNSで使い回せますので、一度の撮影でまとめて押さえておくのが効率的です。
色褪せたポスターの貼り替えもご相談ください。 同じデザインでの刷り増しも、この機会に作り直すことも承ります。
2027年春は統一地方選挙です。 ポスターは撤去期限の前に貼り終えたいので、日程が見えた段階でご相談ください。「まだ出馬を決めていない」という段階でも構いません。
お電話でもフォームでも承ります。ご連絡先はこのページのいちばん下にあります。
2027年4月は統一地方選挙です。 全国で同時に需要が重なるため、車両の確保がいちばん難しい時期になります。えらぶカーでは事前予約を受け付けています。