選挙の世界には、「ドブ板」と「空中戦」という言い方があります。
ドブ板は、足で回る選挙。空中戦は、メディアやSNSで広く訴える選挙。「これからは空中戦の時代だ」という話も、よく聞きます。
ですが、地方選挙に限って言えば、話はそう単純ではありません。
この記事では、2つの言葉の意味と、国の調査で有権者が実際に何に接触しているのかを見ていきます。そして最初に、ドブ板を誤解したまま実行すると違法になるという点を押さえます。
そもそも、どういう意味か
ドブ板選挙の語源は、家の前の溝(ドブ)に渡した板です。板を踏んで一軒一軒を訪ね歩く姿から来ています。地上戦とも呼ばれます。
| 中身 | |
|---|---|
| 地上戦(ドブ板) | 地元を回る、会合に出る、後援会を広げる、街頭に立つ、選挙カーで回る |
| 空中戦 | テレビ・新聞などの報道、インターネット、SNS、動画 |
組織票を固めるのが地上戦、浮動票に届かせるのが空中戦、という整理が一般的です。
【重要】一軒ずつ訪ねて投票を頼むのは、違法です
ここを最初にお伝えします。ドブ板を「一軒一軒まわって票をお願いすること」だと思っている方が、かなりいらっしゃいます。
それは公職選挙法違反です。
戸別訪問は全面的に禁止されています
公職選挙法138条1項は、こう定めています。
何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない
「何人も」です。 候補者本人だけでなく、支援者も、家族も対象です。
さらに2項では、戸別に演説会の告知をしてまわる行為や、候補者の氏名・政党名を言いあるく行為も、戸別訪問とみなすと定めています。
玄関に入らなくても戸別訪問です
高知市選挙管理委員会は、こう説明しています。
家の出入口に接する玄関先、店先、軒先、道端で訪問すれば、相手と会えても会えなくても戸別訪問になる。
「家に上がっていないから大丈夫」ではありません。会社や工場、事務所を訪ねて投票を依頼することも同じです。
罰則があります
公職選挙法239条1項3号により、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金と定められています。
なお、戸別訪問の禁止については最高裁が一貫して合憲と判断しています(昭和56年7月21日判決ほか)。「表現の自由に反するのでは」という議論はありますが、制度としては動いていないとお考えください。
では、本物のドブ板とは何か
「一軒ずつ訪ねる」のではなく、「人が集まっている場所に入っていく」ことです。
実際に効いているのは、次のような動きです。
| やること | 中身 |
|---|---|
| 地域に入る | 自治会に顔を出す。地域の集まりに通う |
| 消防団・市民消火隊に入る | 入って、活動する |
| 祭りを手伝う | 客としてではなく、運営側として動く |
| 政治活動用チラシのポスティング | 告示前の政治活動として配る |
| ポスターを貼る | 貼らせてもらえる場所を増やす |
| 駅や大通りに立つ | 決まった場所に、決まった時間に、繰り返し立つ |
どれも「訪ねる」ではなく「居る」ことです。 ここが戸別訪問との決定的な違いです。
加えて、後援会を作って広げること。これは選挙運動ではなく政治活動として、告示前から行えます。後援会の作り方と名簿の扱いは後援会名簿は個人情報保護法の「適用除外」ですにまとめました。
線引きが微妙な領域です。 迷ったら、必ず管轄の選挙管理委員会にご確認ください。ネットの解説より確実です。
実際の一日が何で埋まるのか、駅立ちの装備まで含めた実務は市議選で当選する人がやっていることにまとめました。
有権者は、実際に何に接触しているのか
ここからがデータです。
明るい選挙推進協会が、2023年の統一地方選挙について行った全国意識調査(第20回統一地方選挙全国意識調査、令和6年3月)の数字を見ます。

候補者側の選挙運動への接触
| 見たり聞いたりしたもの | 割合 |
|---|---|
| 候補者のポスター | 48.4% |
| 街頭演説 | 30.9% |
| 連呼 | 26.2% |
| 選挙公報 | 25.5% |
| ビラ(マニフェスト) | 20.0% |
| 候補者の葉書 | 19.2% |
| 候補者の新聞広告 | 11.1% |
ポスターが断トツです。 約半数が見ています。
そして連呼が26.2%。 「うるさいだけで意味がない」と言われがちですが、4人に1人が実際に聞いているという数字です。街頭演説の30.9%と合わせれば、選挙カーが運んでいるものは、決して小さくありません。
報道・ネット情報への接触
こちらは別の設問です。
| 見たり聞いたりしたもの | 割合 |
|---|---|
| テレビの選挙関係報道 | 55.8% |
| 新聞の選挙関係報道 | 47.3% |
| インターネット上の選挙関連情報 | 20.7% |
| ラジオの選挙関係報道 | 6.2% |
設問が違うので、ポスターの48.4%とネットの20.7%を単純に並べることはできません。 ただ、地方選挙において、インターネットが圧倒的な主役になっているわけではないということは読み取れます。
「役に立った」で見ると
| 割合 | |
|---|---|
| 新聞の選挙関係報道 | 37.4% |
| テレビの選挙関係報道 | 35.1% |
| 選挙公報 | 17.6% |
| インターネット上の選挙関連情報 | 15.4% |
| 候補者のポスター | 10.5% |
接触では届いても、判断材料になるかはまた別だということも分かります。
ここから読めること
1. 地方選は、まだ地上戦が土台です
候補者が自分で打てる手の中で、いちばん届いているのはポスターです。 次が街頭演説と連呼。
これらはすべて、足と車と印刷物の世界です。地方選挙において、この土台を飛ばして空中戦から入るのは、順番が逆になります。
ポスターの仕組みは選挙でもないのに、なぜ街に政治家のポスターが貼ってあるのかに、看板の費用は選挙カーの看板はいくらかかる?にまとめています。
2. 空中戦は「広げる」より「受け止める」もの
インターネットへの接触は20.7%。数としては主役ではありません。
ですが、性質が違います。
ポスターや連呼で名前を知った人が、次にやることは検索です。 そのとき何も出てこなければ、そこで終わります。逆に、ちゃんとしたホームページと、更新されているSNSがあれば、そこで初めて「どんな人か」が伝わります。
空中戦は、地上戦で作った関心の受け皿だとお考えください。先に広がるのではなく、後から支える。
何を載せるべきかは政治家のホームページに何を載せるべきかにまとめました。
3. 無所属なら、地上戦の比重がさらに上がります
市区町村議会議員の68.7%は無所属です(総務省、令和6年12月31日現在)。
党の支援がないということは、組織票を貸してもらえないということです。自分で回り、自分で名前を届けることになります。詳しくは政党の公認は取るべきかをご覧ください。
2027年の統一地方選挙に向けて、選挙カーの事前予約を受け付けています。 台数に限りがありますので、2027年統一地方選挙|選挙カーの事前予約をご覧ください。
何にいくらかかるか
地上戦と空中戦、それぞれの道具と費用です。えらぶカーでお受けしている範囲でお出しします。
| 内容 | 料金(税別) | |
|---|---|---|
| 地上戦 | 選挙期間の車両 | 公費+198,000円〜(時期により変動) |
| 地上戦 | 政治活動・月額プラン | 70,000円 / 月〜 |
| 地上戦 | 看板デザイン+4面印刷 | 120,000円 |
| 地上戦 | ポスターデザイン | 40,000円 / 枚 |
| 地上戦 | 看板セット(買い切り・税込) | 327,800円 |
| 地上戦 | 看板・音響フルセット(買い切り・税込) | 438,000円 |
| 空中戦 | ホームページ制作・ショート動画 | 料金ページをご覧ください |
選挙カーと看板は公費の扱いが分かれます。 車両の借入れ・燃料・運転手は公費の対象、看板の製作費は対象外です。選挙カーの公費負担、実際いくら戻る?にまとめました。
よくある質問
Q. ドブ板は古いやり方ではないですか?
地方選挙に限れば、そうとは言えません。 ポスター48.4%、街頭演説30.9%、連呼26.2%という数字は、足と車で運ぶものが依然として届いていることを示しています。
Q. SNSだけで戦えますか?
難しいと考えています。 インターネットへの接触は20.7%、役に立ったは15.4%です。それに、SNSは知っている人にしか届きません。 名前を知らない人に最初に届くのは、いまのところポスターと選挙カーです。
Q. 連呼はうるさいと思われませんか?
思われることはあります。 ただ、うるさいと思われることと、覚えられることは両立します。 音量と時間帯のルールを守ることのほうが大事です。選挙カーは何時から何時まで?をご覧ください。
Q. 支援者に家を回ってもらうのは?
できません。 138条は「何人も」と定めています。支援者が投票依頼で戸別に訪問すれば、同じく違反です。陣営の中で共有しておいてください。
Q. 後援会への入会をお願いして回るのは?
投票依頼にあたるかどうかが分かれ目です。 また、選挙人に対する署名運動には別の制限もあります(同138条の2)。この領域は判断が難しいので、必ず選管にご確認ください。
Q. 選挙が終わってからのお礼回りは?
当選のあいさつのための戸別訪問も禁止されています。 気持ちは分かりますが、ここで足をすくわれる例があります。
選挙カー・看板のご相談を承っています
えらぶカーは、東京・大森を拠点に、選挙カー・街宣車のレンタルと販売を行っています。全国対応です。
地上戦の道具はこちらで、空中戦の受け皿もこちらで用意できます。 ホームページ制作、ショート動画、SNSの運用支援もあわせて承っています。
山西が直接担当します。 所属や党派に関わらず、同じ条件でお受けしています。
この3つを教えていただければ、お見積りをお出しします。
- どの選挙か(市議選/町村議選/首長選 など)
- 告示日と投票日(未定でも構いません)
- 必要なもの(選挙カー1台/看板だけ/ホームページだけ など)
2027年春は統一地方選挙です。 車両も印刷も同じ時期に重なりますので、日程が見えた段階でご相談ください。「まだ出馬を決めていない」という段階でも構いません。
お電話でもフォームでも承ります。ご連絡先はこのページのいちばん下にあります。