「支援者のXアカウントで拡散してもらうのはOKだと聞いたので、同じ内容をメールでも送っていいですよね?」――ある候補予定者の陣営で、20代のボランティアスタッフからこんな質問が出たことがありました。SNSでの発信は2013年の公選法改正で有権者にも幅広く解禁されましたが、実は電子メールだけは今も別建ての、より厳しいルールが定められています。この違いを知らずに支援者がメールを転送してしまうと、思わぬ形で法律違反になりかねません。
※この記事は2027年2月までのルールを説明しています。 2027年3月1日の改正法施行により、電子メールの規制は撤廃され、SNSと同じ扱いになります。詳しくは記事後半の「【重要】2027年3月1日から、このルールは撤廃されます」をご覧ください。

なぜ電子メールだけ特別なルールがあるのか
2013年の公職選挙法改正により、候補者・有権者を問わず、ホームページやSNSを使った選挙運動(文書図画の頒布)は幅広く解禁されました。ところが電子メールについては、迷惑メール対策やなりすまし防止の観点から、公職選挙法第142条の4で候補者・SNSとは別の独立した規制が設けられています。「メールだから何でも自由に送っていい」わけではなく、むしろSNSより制約が厳しい方法だと理解しておく必要があります。
送信できるのは候補者・政党等に限られる
選挙運動用電子メールを送信できるのは、候補者本人・候補者届出政党・衆参名簿届出政党等・確認団体に限られます。一般の支援者やボランティアがメールで選挙運動を行うことはできません。これはSNSの利用可否とは異なるルールなので注意が必要です。また、LINEやXなどSNSの「ダイレクトメッセージ」機能を使った送信も、電子メールと同様の規制対象になるとされています。「アカウントの種類が違うから大丈夫」という判断はできません。
送信していい相手にも条件がある(オプトイン)
候補者・政党等であっても、誰にでも自由に選挙運動用メールを送れるわけではありません。送信できる相手は、次のいずれかに該当する人に限られます。
- あらかじめ選挙運動用メールの送信を求め、または送信に同意し、自分のメールアドレスを送信者に通知した人
- その送信者が発行するメールマガジンなどを継続的に受信しており、選挙運動用メールへの送信を拒否していない人
つまり、名簿業者から購入したアドレスへ一斉送信したり、街頭演説で集めた名刺のメールアドレスに無断で送ったりすることは認められません。誰がいつ同意・request(求め)をしたかの記録を残しておくことも、法律上求められています。
メールには必ず記載しないといけない事項がある
選挙運動用電子メールには、次の内容を表示することが義務付けられています。
- 選挙運動用の電子メールである旨
- 送信者(候補者・政党等)の氏名または名称
- 受信拒否ができる旨と、その連絡先(返信先メールアドレスなど)
受信者から「もう送らないでほしい」という拒否の連絡があった場合、それ以降そのアドレスへの送信は禁止されます。一度送ったら終わりではなく、拒否の申し出にきちんと対応できる体制を整えておくことが前提になります。
有権者が候補者からのメールを転送するとどうなるか
候補者から届いた選挙運動用メールに共感し、「これはいい内容だから」と友人に転送したくなる支援者もいるかもしれません。しかし、一般の有権者は選挙運動用電子メールを送信できないため、候補者からのメールをそのまま転送する行為も規制の対象になり得ます。応援したい気持ちが強いほど起こりやすい行動だからこそ、陣営側から支援者へ事前に「転送はしないでほしい」と伝えておくことが実務上のポイントになります。
【重要】2027年3月1日から、このルールは撤廃されます
ここまで説明してきた電子メールの厳しい規制は、2027年3月1日をもって撤廃されます。 2026年7月13日に成立した公職選挙法の改正で、候補者・政党等に限定する枠組みとオプトイン(事前同意)の要件が廃止され、一般的なウェブサイトやSNSと同じ規制に一本化されることになりました。適用は2027年春の統一地方選挙からです。
ただし「何でも自由になる」わけではありません。虚偽事項の公表や誹謗中傷が禁じられる点は変わりませんし、選挙運動期間の外で投票を呼びかければ事前運動として違法という原則も動きません。また公職選挙法とは別に、特定電子メール法や個人情報保護法は引き続き適用されます。名簿の入手経路や同意の有無は、そちらの法律で問われることになります。
2027年2月までの選挙には、この記事で説明している現行ルールがそのまま適用されます。 切り替わりの時期は取り違えやすいので、選挙の日程と照らして確認してください。改正の全体像は2027年3月から選挙のネット運用が変わる|AI表示義務・メール解禁・なりすまし規制にまとめています。
よくある質問
Q. ボランティアスタッフの個人アドレスから応援メールを送るのは問題ありませんか?
選挙運動用電子メールを送信できるのは候補者・政党等に限られるため、一般のボランティアスタッフが選挙運動用のメールを送信することはできません。
Q. LINEの公式アカウントからの一斉配信も電子メールと同じ扱いですか?
いいえ、扱いが違います。総務省の資料では「電子メール(SMTP方式及び電話番号方式)以外の通信方式を用いて、SNSのユーザー間でやり取りするメッセージ機能は『ウェブサイト等』に含まれます」とされており、LINEのメッセージ機能はここでいう「ウェブサイト等」にあたります。つまり一般の有権者でも選挙運動に使えます。 一方でSMS(電話番号方式)は電子メール扱いなので、候補者・政党等しか送れません。同じスマホの中でも線引きが違う点に注意してください。個別の運用は選挙管理委員会にご確認ください。
Q. 過去の名刺交換で得たアドレスに送ってもいいですか?
あらかじめ送信の求め・同意を得ていないアドレスへの送信は認められません。名刺交換をした事実だけでは、法律が求める同意の要件を満たさない可能性があるため注意が必要です。
電子メールを使った選挙運動は、SNSに比べて要件が細かく、判断に迷う場面も少なくありません。個別の状況については、必ず選挙管理委員会に事前確認することをおすすめします。
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