LINE公式アカウント【立ち上げから運用体制まで】友だちの増やし方とリッチメニュー設計のコツ

目次

事務所の朝に起きていること

選挙事務所の朝、机の上にはチラシの束と一緒に、スマートフォンが何台も並んでいることが多くあります。ある新人候補者の陣営では、後援会の会長が個人のLINEで支援者一人ひとりに連絡を取り、選対本部長は別のグループトークで日程調整をし、候補者本人はSNS担当のボランティアに投稿を丸投げしています。誰が何を誰に送ったのか、事務所の誰も把握していません。告示日が近づくにつれ、この状態のまま情報発信を続けることに不安を感じ始める陣営は少なくありません。

その解決策としてよく挙がるのが、LINE公式アカウントの導入です。個人LINEのやり取りを「アカウント」という組織的な窓口に一本化し、誰が担当しても同じ品質で情報を届けられるようにする仕組みです。この記事では、送っていい文言・ダメな文言という話には深入りせず、アカウントの立ち上げから複数人での運用体制の作り方まで、実務としての「オペレーション」に絞って解説します。個別の送信文言については、姉妹サイトの記事「LINEで投票のお願いはOK?選挙違反になりやすい例文を紹介」を参照してください。

個人LINEで支援者とやり取りしていた頃は、候補者が体調を崩して数日返信できなかっただけで、支援者側から「連絡が来なくなった、活動をやめたのか」と心配の声が上がったという話もよく聞きます。組織立った窓口を持たないまま選挙戦に入ると、こうした小さなすれ違いが積み重なり、思わぬところで陣営の評判に影響することがあります。LINE公式アカウントを軸に据えることは、単なる効率化の話ではなく、候補者個人に依存しない発信体制を作るという意味合いも大きいといえます。

本稿で扱うのは、開設方法の概要、友だち追加を増やすための導線設計、リッチメニューの作り方とメリット、配信機能ごとの使い分け、そして最大100名まで置ける運用担当者を活かしたチーム運用の五点です。順番に見ていきます。


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LINE公式アカウントとは何か、候補者にとっての意味

LINE公式アカウントは、企業や店舗が顧客とやり取りするために提供されているビジネス向けのLINEアカウントで、個人のLINEアカウントとは別の仕組みとして運営されています。候補者や政治団体が開設することも可能で、実際に多くの現職議員・候補者がすでに活用しています。個人LINEと違い、複数の運用担当者が同じアカウントにログインして対応でき、配信履歴やメッセージのテンプレートを組織で共有できる点が最大の特徴です。

選挙運動という観点で見ると、LINE公式アカウントは大きく分けて二つの顔を持ちます。一つは「一斉配信」という、登録している友だち全員(またはセグメントを絞った一部)に同時にメッセージを送る機能です。もう一つは、友だち一人ひとりと1対1でやり取りする「個別チャット」やタイムライン投稿です。この二つは法律上まったく異なる扱いを受けるため、後述します。まずは開設から友だち集めまでの流れを押さえておきたいと思います。

アカウント開設の流れをざっと押さえます

開設作業自体は難しくありません。LINE for Businessの公式サイトから「LINE公式アカウントを開設(無料)」に進み、メールアドレスまたはLINEアカウントでログインし、アカウント名・業種・地域などの基本情報を入力すれば、その日のうちに開設が完了します。候補者名や後援会名を含めたアカウント名にしておくと、友だち追加時に何のアカウントか一目で伝わりやすくなります。

開設後にまず整えておきたいのが、プロフィール画像とあいさつメッセージです。プロフィール画像は候補者の顔写真やロゴを設定し、友だち追加直後に自動送信される「あいさつメッセージ」には、アカウントの目的や今後どのような情報を届けるのかを簡潔に書いておきます。ここで公職選挙法上の注意点として、公示(告示)前の段階では投票依頼や立候補の意思表明を含めることはできないため、あいさつメッセージの文面も「活動報告や政策発信を行うアカウントです」といった政治活動の範囲にとどめておく必要があります。

プランは無料の「コミュニケーションプラン」でも一斉配信を月1000通まで送れるため、友だちが少ないうちはこれで十分運用できます。友だちが増えて配信数が上限を超えそうになったら、有料プランへの切り替えを検討すればよいでしょう。ここでの投資判断は、街宣車のレンタル費用や印刷物の費用と同じ感覚で、友だち数の伸びを見ながら決めていく話になります。

友だちを増やす導線をどう設計しますか

アカウントを作っただけでは、当然ながら誰にも届きません。友だち追加数を伸ばすには、複数の入口を同時並行で用意し、日常の活動の中に自然に組み込んでいくことが要になります。

QRコードをあらゆる接点に置きます

LINE公式アカウントには友だち追加用のQRコードが自動発行されます。このQRコードを名刺、選挙はがき、たすき、街宣車のマグネットステッカー、後援会ニュースレターの隅など、候補者や陣営が関わるあらゆる印刷物に載せておきます。ある陣営スタッフは、街頭演説で配るポケットティッシュのパッケージにまでQRコードを刷り込んで、友だち追加数を1か月で3倍に伸ばしたという例もあります。目立つ場所より、手に取った人が思わず読み込みたくなる「余白」に置く方が反応が良いことも多いようです。

街頭演説・集会でその場で登録してもらいます

街頭演説や個人演説会の場は、QRコードを掲示するだけでなく、司会やスタッフが「その場で友だち追加していただくと、次の演説日程が届きます」と口頭で案内できる貴重な機会です。演説台の横に大きめのQRコードパネルを立てておき、聴衆がスマートフォンを構えたその瞬間に登録できる状態を作っておきます。集会後のアンケート用紙にQRコードを印刷しておくのも有効で、会場を出る前の数分間が最も友だち追加率の高い時間帯になりやすくなります。

ウェブサイトやブログにも常設のリンクを

候補者のホームページやブログのヘッダー、記事末尾には、常時LINE公式アカウントへのリンクボタンを設置しておきます。ブログで政策や活動報告を読んだ人が「もっと詳しく知りたい」と感じたその流れのまま友だち追加できるようにしておくと、離脱を防げます。SNSの投稿文の末尾に固定リンクを添えておくのも同様の効果があります。要は、有権者が候補者に関心を持った瞬間を逃さず、次の行動(友だち追加)へつなげる導線をあらかじめ複数箇所に張っておくということです。

もう一点、意外と見落とされがちなのが、友だち追加数の推移を定期的に確認する習慣です。LINE Official Account Managerの分析画面では、友だちがどの経路(QRコード、友だちリンク、タイムラインなど)から増えたのかをある程度把握できます。街頭演説の翌日に友だちが伸びていればその導線が効いている証拠になりますし、伸びが鈍い週があれば、印刷物の設置場所やアナウンスの仕方を見直すきっかけになります。感覚だけに頼らず、数字を週次でチェックする係を一人決めておくと、限られた活動時間の中でも効果の高い導線に絞り込んでいけます。

リッチメニューという入り口を作り込みます

リッチメニューとは、トーク画面の下部に常時表示される、タップ式のメニュー画像のことです。友だち追加した人が最初に目にする「入口」であり、ここの設計次第で情報の届きやすさが大きく変わります。

一般的な構成としては、「候補者プロフィール」「政策・公約」「活動報告(ブログ)」「イベント日程」「後援会入会案内」「お問い合わせ」といった項目を、画像を分割したタイル状のボタンとして並べます。各タイルをタップすると、外部サイトのURLに遷移したり、あらかじめ用意したテキストメッセージが自動返信されたりする仕組みです。デザインツールは無料のCanvaなどでも十分作成でき、LINE公式アカウントの管理画面(LINE Official Account Manager)からテンプレートを選んで画像を当てはめるだけで設定が完了します。

リッチメニューを整備しておく利点は、単に見た目が整うということだけではありません。友だちになった人が「このアカウントから何が得られるのか」を一目で理解できるため、追加直後の離脱(いわゆるブロック)を防ぎやすくなります。また、公示前と公示後でメニューの内容を切り替えることもできます。公示前は「政策」「活動報告」「後援会案内」を前面に出し、告示後には「期日前投票の案内」や「選挙公報リンク」といった項目に差し替える、という運用も可能です。メニュー画像は複数パターンを事前に用意し、日程が近づいたら担当者が差し替えるだけで済むようにしておくと、当日慌てずに済みます。


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一斉配信・個別チャット・ターゲティング・予約配信の使い分け

LINE公式アカウントには複数の配信手段が用意されていますが、それぞれの性格を理解せずに使うと、選挙運動の観点で思わぬ落とし穴にはまります。ここが今回の記事で最も丁寧に説明したい部分です。

一斉配信は「メールマガジン」に準ずる扱い

登録している友だち全員、あるいは条件を絞ったセグメントに同時送信する「一斉配信」は、公職選挙法上、候補者に認められている「選挙運動用電子メール(いわゆるメールマガジン)」に準ずるものとして扱われています。つまり、一斉配信という手段そのものが候補者・政党等にのみ認められた特権的な方法であり、候補者・政党等以外の一般有権者がこの機能を使って投票依頼のメッセージを不特定多数に一斉送信することはできません。陣営スタッフやボランティアが善意で「応援してください」という一斉配信を候補者に無断で行うようなことがあれば、法の想定する主体を外れてしまう可能性があります。一斉配信ボタンを押す権限は、誰が最終的に持つのかをあらかじめ決めておく必要があります。

個別チャットとタイムラインは「ウェブサイト等を利用する方法」

一方、友だちとの1対1の個別チャットでのやり取りや、タイムラインへの投稿は「ウェブサイト等を利用する方法」に分類されます。これはブログやX(旧Twitter)への投稿と同じカテゴリーであり、候補者だけでなく有権者も自由に使うことができる方法です。支援者から届いた質問に個別チャットで返信したり、応援メッセージのやり取りをタイムラインで公開したりすることは、告示後であれば有権者側からも自由に行えます。一斉配信という「メール的」な扱いと、個別チャット・タイムラインという「ウェブサイト的」な扱いの違いを、陣営内で正しく共有しておくことが、余計なトラブルを避ける近道になります。

ターゲティング配信と予約配信の実務的な使いどころ

ターゲティング配信は、友だち追加時期や属性、リンククリック履歴などの条件をもとに配信対象を絞り込む機能で、例えば「特定のイベントページのリンクをクリックした人だけに次の案内を送る」といった使い方ができます。予約配信は、あらかじめ日時を指定してメッセージを自動送信する機能で、演説会の前日夜に翌日の日程を自動送信する、といった運用に向いています。ただし予約配信は「設定した時点」の判断で未来の配信を仕込む機能であるため、後述する投票日当日の配信禁止との関係で注意が必要になります。

告示(公示)前と告示後で発信内容が変わります

選挙運動は、告示日から投票日前日までの期間しか行うことができません。告示前の段階で投票依頼や立候補の表明を含む発信をしてしまうと、事前運動として問題になります。この期間、LINE公式アカウントで発信してよいのは、あくまで政治活動の範囲、具体的には日頃の活動報告、政策の発信、講演会や議会報告会の告知、後援会の会員募集といった内容にとどまります。

告示後は状況が変わり、LINEを通じた投票依頼が正式に認められます。ここで初めて「〇〇に一票をお願いします」といった文言を、個別チャットやタイムラインといったウェブサイト的な手段で発信できるようになります(一斉配信については候補者・政党等自身による発信という前提があります)。陣営としては、告示前と告示後でリッチメニューの内容やあいさつメッセージの文面を切り替える準備を進めておき、告示日を境にボタン一つで表示を変えられるようにしておくと運用がスムーズです。

友だちの年齢を確認できないリスクにも目を向けます

公職選挙法では18歳未満の者による選挙運動が一切禁止されています(公職選挙法137条の2、239条)。これは選挙運動を「する」側の制限であり、未成年者自身がビラ配りや電話かけなどの選挙運動に従事することが禁じられているという規定です。

ここで陣営が意識しておきたいのは、LINE公式アカウントの友だちの年齢は、追加時に確認する手段がないという点です。街頭演説の場でQRコードを読み込んで友だち追加した人が高校生であっても、陣営側にはその情報はわかりません。一斉配信で投票依頼のメッセージを送る場合、その対象の中に未成年者が含まれている可能性を完全には排除できません。年齢確認の手段がない以上、友だち全体への配信文面は、特定の個人に投票を強く迫るような表現よりも、活動報告や政策の周知に軸足を置いた内容にしておく方が、結果的にリスクを抑えることにつながります。

投票日当日は配信を止めます、予約配信の設定確認を忘れずに

公職選挙法129条により、投票日当日はいかなる選挙運動も禁止されています。これはLINEでの発信にも当然適用され、投票を呼びかけるメッセージは投票日当日には送ることができません。

ここで実務上見落とされがちなのが、予約配信の設定です。告示後に「毎日夜8時に翌日の予定を配信する」といった予約を組んでいた場合、そのまま何も手を加えなければ投票日当日の朝や前夜にも自動的に配信されてしまいます。担当者が投票日前日までにすべての予約配信の設定を洗い出し、投票日当日分の配信が入っていないかを必ず確認しておく必要があります。投票日当日に送ってよいのは、投票を呼びかけない純粋な事務連絡程度に限られると考えておいた方が安全です。この確認作業は、配信担当者一人に任せきりにせず、チェック担当者が別途ダブルチェックする体制にしておくと安心感が違います。

2026年の法改正と2027年施行に向けた心構え

2026年7月13日、公職選挙法および情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)の改正が成立しました。この改正は2027年3月1日に施行され、2027年春に予定されている統一地方選挙から本格的に適用される見込みです。インターネット上の選挙運動、とりわけSNSやメッセージアプリを通じた発信のあり方は、この改正によって細部が今後さらに整理されていく可能性が高いといえます。

現時点でLINE公式アカウントの運用体制を整えておくことは、この法改正への備えとしても意味があります。一斉配信とウェブサイト的な手段の区分けや、担当者ごとの権限管理といった運用の骨格は、法改正後も土台として活きてくる部分が大きいといえます。逆に言えば、細かな解釈や運用の詳細は施行までの間に変わる可能性があるため、2027年に向けては都度、選挙管理委員会や弁護士など専門家への確認を怠らない姿勢が欠かせません。

最大100名まで追加できる運用担当者を活かしたチーム運用

LINE公式アカウントは、1つのアカウントに対して最大100名まで運用担当者を追加できます。この上限の大きさは、個人LINEでの属人的なやり取りから抜け出し、陣営として組織的にLINEを運用するための土台になります。

実際の陣営運営を想定すると、役割はおおむね次の三つに分けて考えると整理しやすくなります。一つ目は「配信文面を作る担当」で、政策担当スタッフや広報担当が、その日の活動内容や翌日の予定をもとに下書きを作成します。二つ目は「チェックする担当」で、選対本部長や候補者本人に近いベテランスタッフが、公職選挙法上の表現に問題がないか、告示前後で発信していい範囲を超えていないかを確認します。三つ目は「実際に配信する担当」で、チェックを経た文面のみを、決められた権限を持つ担当者が一斉配信ボタンを押す、あるいは個別チャットで送信します。

この三段階を分けておく最大の理由は、一人の判断ミスで法令違反につながる事態を防ぐためです。LINE Official Account Managerでは、管理者権限を持つ担当者がメンバーごとに「管理者」「運用担当者(フル権限)」「運用担当者(投稿権限のみ)」といった権限設定を行えます。文面作成担当には投稿権限のみを与え、実際の配信は管理者権限を持つ限られた人物しか行えないようにしておけば、確認前の文面がうっかり配信されてしまう事故を構造的に防げます。

体制づくりでもう一つ大事なのは、配信のタイミングを誰が最終決定するかを事前に決めておくことです。街頭演説の予定変更や天候による日程変更など、選挙戦の現場は刻一刻と状況が変わります。誰かが「今すぐ送りたい」と思っても、チェック担当が不在であれば送らない、というルールを陣営内で共有しておくことで、慌ただしい選挙期間中でも一定の品質を保った発信ができるようになります。ボランティアスタッフが日替わりで入れ替わる陣営ほど、この権限設計とルールの明文化が効いてきます。

小規模な陣営であれば、最初から100名分の権限を使い切る必要はありません。まずは候補者本人、選対本部長、広報担当の3〜5名程度でアカウントを共有し、告示日が近づいて業務量が増えてきたタイミングで、日程管理担当や後援会窓口担当を順次追加していく、という段階的な広げ方でも十分機能します。大切なのは人数の多さそのものではなく、「誰が作り、誰が確認し、誰が送るか」という三つの役割が、いつ誰が見ても分かる状態になっていることです。この役割分担を選挙前の平時のうちに一度紙に書き出し、実際に模擬配信で動かしてみると、告示直後の慌ただしい時期にも迷いなく運用できるようになります。


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まとめ

LINE公式アカウントは、開設自体は難しくないものの、友だちを増やす導線、リッチメニューの設計、配信機能の使い分け、そして複数人での運用体制づくりまで含めて初めて選挙戦での武器になります。一斉配信は候補者に認められたメールマガジン的な扱いであり、個別チャットやタイムラインはウェブサイト的な扱いになるという違いを陣営内で共有し、告示前後の発信範囲や投票日当日の配信停止、予約配信の設定確認まで含めた運用ルールを、最大100名まで置ける運用担当者の権限設計とあわせて整えておきたいところです。

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