SNSの「いいね」「シェア」「コメント」で投票を呼びかけるのは合法?細かな行為別に整理

目次

SNSの「いいね」「シェア」「コメント」——指先ひとつの行為に潜む法律問題

ある候補予定者の後援会事務所で、20代のボランティアスタッフがスマートフォンを片手にこうつぶやいた。「候補者本人の投稿をシェアするのはOKってわかるんですけど、私が『いいね』を押すだけでも選挙運動になっちゃうんですか?」。隣にいた60代の後援会長も、実は同じ疑問を抱えていました。自分のSNSアカウントで応援コメントを書いたら、それは合法な応援なのか、それとも公職選挙法に触れる行為なのか、という疑問です。誰も悪意があって尋ねているわけではありません。むしろ「候補者を応援したい」という素朴な気持ちが強いからこそ、うっかり一線を越えてしまうことを恐れているのです。

選挙運動そのものの合法性や、メッセージ送信の可否について解説した記事はすでに数多く存在します。しかし実際に候補者や陣営スタッフ、そして応援したい有権者が日々直面するのは、もっと細かい「指先の動作」に関する疑問です。投稿を作るかどうかではなく、既にある投稿に対して「いいねを押す」「シェア・リポストする」「コメント欄に書き込む」という三つのアクションを、いつ・誰が行うかによって、合法にも違法にもなり得ます。この記事では、この3つの行為を軸に、行為別・場面別に整理して解説します。


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合法・違法を分ける4つの視点

SNS上の発信が選挙運動として問題になるかどうかを考えるとき、次の4つの軸で整理すると判断しやすくなります。

  • 目的:単なる意見表明・感想なのか、特定候補への投票を呼びかける行為なのか
  • 時期:公示・告示前なのか、選挙運動期間中(告示日〜投票日前日)なのか、投票日当日なのか
  • 主体:候補者・政党なのか、18歳以上の一般有権者なのか、18歳未満の未成年なのか
  • 手段:自分で投稿するのか、既存の投稿に反応する(いいね・シェア・コメント)だけなのか

例えば「投票日当日に、高校生が候補者名入りの投稿をリポストした」というケースを考えてみると、目的(投票呼びかけ)、時期(投票日当日)、主体(18歳未満)、手段(リポスト)のすべてが違法方向に働いてしまう、いわば「四重苦」の状態になります。逆に「選挙運動期間中に、30代の会社員が候補者の政策紹介の投稿に共感してリポストした」場合は、目的・時期・主体・手段のいずれも問題なく、安心して行える行為だと判断できます。この4つを頭に置きながら「いいね」「シェア・リポスト」「コメント」の3行為を見ていくと、なぜ同じ「ボタンを押すだけ」の行為でも扱いが変わるのかが見えてきます。

「いいね」を押す行為は合法でしょうか

結論から言えば、18歳以上の有権者が選挙運動期間中に候補者の投稿へ「いいね」を押すこと自体は、一般的には直ちに選挙運動には当たらないと考えられています。「いいね」は自分から新たに文章や画像を発信する行為ではなく、既存の投稿への反応・共感の表明にとどまるからです。有権者は「ウェブサイト等を利用する方法」による選挙運動が認められているため、そもそも積極的な応援投稿でも合法な場面は多いのですが、「いいね」はさらに受動的な行為として扱われやすくなっています。

ただし、ここには曖昧な部分も残ります。「いいね」を押すとフォロワーのタイムラインに「〇〇さんがいいねしました」と表示されるプラットフォームもあり、実質的に拡散効果を持つ場合があります。総務省や選挙管理委員会が「いいね」を選挙運動として明確に定義した通達を出しているわけではないため、グレーゾーンとして語られることもある点は理解しておきたいところです。とはいえ、実務上のリスクという意味では、この記事で扱う3行為のうち最も安全性が高いのが「いいね」だと言えます。実際、後援会の集まりで「まずは気軽にいいねから始めてください」と呼びかける陣営スタッフは多く、心理的なハードルの低さと法的なリスクの低さが一致している珍しい行為とも言えるでしょう。

「シェア・リポスト」する行為は合法でしょうか

18歳以上の一般有権者が、選挙運動期間中に候補者本人や陣営の投稿をシェア・リポストする行為は、基本的に合法です。これは新たな文章を書き加えていなくても、その投稿を自分のフォロワーに向けて能動的に拡散する行為であり、「ウェブサイト等を利用する方法」による選挙運動の一形態として認められています。後援会長がスマートフォンから候補者の街頭演説の動画をリポストし、「本日の演説会、多くの方にお越しいただきました」と一言添えて拡散するようなケースは、告示日から投票日前日までの間であれば問題になりません。

注意すべきは主体と時期です。同じリポストという行為でも、行う人が18歳未満であれば話は変わってきますし、投票日当日に行えばやはり違法となります。行為そのものの性質は同じでも、「誰が」「いつ」行うかで結論が正反対になる典型例がこのシェア・リポストだと言えるでしょう。また、リポストする際にフォロワー数の多いアカウントを狙って依頼する、いわゆる「拡散のお願い」を組織的に行う場合、その依頼自体が選挙運動の一環とみなされることもあるため、誰にどう頼むかも意識しておく必要があります。

応援コメントを書き込む行為は合法でしょうか

候補者の投稿欄に「応援しています」「投票します」といったコメントを書き込む行為も、18歳以上の一般有権者が選挙運動期間中に行うのであれば合法です。コメントは自分自身の言葉で新たに意見や支持を表明する行為であり、内容次第では投票依頼に近い性格も持ちますが、有権者による自由な言論活動として認められている範囲に収まります。

ただしコメントは「いいね」よりも能動性が高く、書き込んだ本人の意思表示がはっきりと文字として残ります。誹謗中傷や事実に反する内容を書き込めば、選挙の合法・違法とは別に名誉毀損など別の法的問題に発展するリスクもある点は付け加えておきたいところです。あくまで「純粋な応援コメント」を前提とした話であることは押さえておいてください。相手候補を名指しで批判するようなコメントは、たとえ書き手が18歳以上であっても、選挙とは別の民事・刑事上の問題に発展しかねないため、応援は応援、批判は批判として切り分けて考える習慣をつけておくと安心です。

行為×場面のマトリクスで一気に整理します

ここまで見てきた内容を、行為(いいね・シェア/リポスト・応援コメント)と場面(18歳以上の一般有権者・18歳未満・投票日当日)の組み合わせで一覧化すると、次のようになります。

行為 18歳以上(選挙運動期間中) 18歳未満 投票日当日
いいね 合法(基本的に問題なし) 合法とされることが多い 候補者名を含む投稿への反応はリスクあり
シェア・リポスト 合法 違法となる可能性が高い 違法(特定候補への投票呼びかけを含む場合)
応援コメント 合法 違法となる可能性が高い 違法(特定候補名を挙げる内容の場合)

この表からわかる通り、「いいね」は場面が変わっても比較的安全側に位置しますが、「シェア・リポスト」と「応援コメント」は主体(18歳未満かどうか)と時期(投票日当日かどうか)次第で一気に違法側へ転じます。特に投票日当日については、後ほど詳しく触れるように「何を書いたか」によって結論が変わるため、表だけで機械的に判断せず、必ず投稿内容も合わせて確認してください。

政党や他の候補者の投稿でも同じルールが当てはまるでしょうか

ここまでは特定の候補者本人の投稿を前提に説明してきましたが、政党の公式アカウントや、応援している候補者と同じ政党に所属する別の候補者の投稿についても、基本的な考え方は変わりません。18歳以上の有権者が選挙運動期間中に政党アカウントの投稿へ「いいね」「シェア・リポスト」「コメント」を行うことは、それが特定の候補者や政党への投票を呼びかける内容である以上、有権者による選挙運動として同じ枠組みで判断されます。逆に言えば、応援したい候補者以外のアカウントであっても、油断せず同じ基準で確認する習慣を持っておく必要があります。

また、複数の候補者を同時に応援している支援者が「こちらの候補もよろしくお願いします」と一つの投稿で複数名をまとめて紹介するようなケースもあります。この場合も行為の性質自体は変わらないため、投稿の中に候補者名や政党名が含まれているかどうかで判断すればよいでしょう。誰の投稿かではなく、投稿の内容と行為の組み合わせで考える、という基本姿勢を崩さないことが大切です。


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非公開(鍵)アカウントでの「いいね」やシェアは扱いが変わるでしょうか

フォロワーを限定した非公開アカウント、いわゆる鍵アカウントで候補者の投稿に反応した場合はどうでしょうか。結論として、公開・非公開という設定の違いによって合法・違法の判断基準そのものが変わるわけではありません。18歳未満であれば、鍵アカウントであってもシェアやコメントは選挙運動とみなされ得ますし、投票日当日であれば、フォロワーが家族だけの非公開アカウントであっても、候補者名を含む投稿を拡散すれば違法となる可能性は残ります。

ただし実務上のリスクという観点では、外部に拡散されにくい分、発覚しにくいという側面はあるかもしれません。とはいえ「見つからなければよい」という発想は陣営運営としてはリスクが高く、うっかりスクリーンショットが広く出回ってしまうケースも実際には少なくありません。鍵アカウントだから大丈夫、という考え方はしないほうがよいでしょう。

候補者側から「シェアしてください」とお願いするのは合法でしょうか

ここまでは有権者側の行為を見てきましたが、逆に候補者や陣営側から支持者に対して「この投稿をシェアしてください」「いいねをお願いします」と呼びかけること自体はどうでしょうか。結論としては、選挙運動期間中であれば、こうした呼びかけも通常の選挙運動の一環として合法です。候補者自身がSNSで「拡散にご協力ください」と投稿すること自体、日常的に行われている光景であり、特段問題視されるものではありません。

気をつけたいのは、その呼びかけの対象や方法です。18歳未満と分かっている相手に個別に「シェアして」と依頼すれば、依頼された側が実際に行動を起こした場合、その未成年者を選挙運動に関与させたことになりかねません。陣営として支援者リストを持っている場合は、年齢が分からない相手や若年層に対する個別の拡散依頼は避け、あくまで公開の投稿として「見てくれた方、よろしければご協力ください」という形にとどめておくのが無難です。

18歳未満のボランティアや家族が陣営を手伝うときの注意点

公職選挙法137条の2および239条により、18歳未満の者による選挙運動は一切禁止されています。これは年齢に関する数少ない明確なルールのひとつで、例外は認められていません。後援会活動の現場では、高校生の子どもが親の応援したい候補者のSNSを熱心にチェックしている、といった場面も珍しくありませんが、ここでの線引きは重要です。

18歳未満の者が候補者の投稿に「いいね」を押すこと自体は、一般的には問題にならないとされています。しかし、その投稿をリポストして自分のフォロワーに拡散したり、「応援しています」といったコメントを書き込んだりする行為は、選挙運動とみなされ違法となる可能性が高いです。陣営スタッフとしては、高校生の子どもや若いボランティアに「シェアやコメントは大人がやるから、見るだけにしておいてね」と一言伝えておくだけでも、思わぬトラブルを避けられます。特に家族ぐるみで応援している陣営では、この年齢による線引きを事前に共有しておくことをお勧めします。学校の友人同士でグループを作ってSNSを見ている高校生も多く、悪気なく「これシェアしとくね」と拡散してしまうケースは想像以上に起こりやすいものです。

投票日当日は「投稿」も「シェア」もアウトになり得ます

公職選挙法129条により、投票日当日はあらゆる選挙運動が禁止されます。これは告示日から投票日前日までは許されていた行為の多くが、投票日当日に限って一斉に禁止に転じるという意味で、最も見落とされやすいポイントでもあります。

例えば投票を終えた有権者が「〇〇さんに投票してきました!」とSNSに投稿すること、あるいはそうした投稿をシェア・リポストする行為は、特定候補者への投票を呼びかける効果を持つとされ、違法となります。投票所を出た瞬間の高揚感からつい書き込んでしまいそうな内容ですが、投票日当日である限り、候補者名や政党名を含む形での投稿・拡散は避けなければなりません。

一方で、候補者名や政党名を一切含まない「今日は投票日です、忘れずに投票に行きましょう」といった一般的な投票参加の呼びかけは、特定の候補や政党を利する内容ではないため、選挙運動には該当せず合法です。同じ「投票」という言葉を使った投稿でも、固有名詞が入るかどうかで結論が変わる、という点はぜひ覚えておいてください。陣営スタッフとしては、投票日当日の朝に「本日は投票日です」という定型的な呼びかけ投稿だけを準備しておき、候補者名を含む応援投稿は前日までに済ませておく、という運用が現実的でしょう。前日の夜までに投稿の下書きをまとめておき、投票日当日は候補者名の入った文面を一切送信しない、というルールを陣営内であらかじめ決めておくと、当日になって慌てずに済みます。

2026年の法改正で押さえておきたいこと

2026年7月13日、公職選挙法および情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)の改正が成立しました。施行は2027年3月1日からとされており、これによりSNS上での選挙運動やなりすまし対策、偽情報への対応などに関するルールがさらに整備される見通しです。この記事で解説した「いいね」「シェア・リポスト」「コメント」に関する基本的な考え方自体が大きく覆るものではありませんが、プラットフォーム事業者側の対応義務や表示の仕組みが変わる可能性があるため、陣営として選挙運動を計画する際は、施行前後の最新情報を選挙管理委員会や総務省の案内で随時確認する姿勢を持っておきたいところです。今回の選挙戦がちょうど施行時期をまたぐ場合は特に、告示前の段階で最新のガイドラインを一度確認しておくと安心です。

陣営が支援者に共有しておきたいチェックリスト

実際の選挙戦では、候補者や事務局長がすべての支援者の行動を逐一確認することはできません。だからこそ、告示前の段階で次のような項目を簡潔にまとめ、ボランティア用のチャットやLINEグループで共有しておくことが有効です。

  • 18歳以上かどうかを本人にも改めて意識してもらう(若いボランティアには特に丁寧に伝える)
  • 投票日当日は候補者名・政党名を含む投稿・シェア・コメントを一切行わない
  • 投票日当日に発信してよいのは「今日は投票日です」といった一般的な呼びかけのみとする
  • 他候補への批判的なコメントは、応援コメントとは切り分けて自重する
  • 不明な点があれば個人の判断で進めず、事務局に確認してから行動する

こうしたチェックリストを一枚にまとめて配布しておくだけでも、投票日当日にありがちな「うっかり投稿」を大きく減らすことができます。特に選挙戦が終盤に差し掛かり、事務局全体が忙しくなる時期ほど、シンプルなルールの共有が効いてきます。

よくある質問

Q. 候補者本人が自分の投稿に「いいね」を押すのは問題ないですか。
A. 候補者自身が自分の選挙運動用の投稿に反応すること自体は特段問題になりません。むしろ候補者本人が発信する投稿こそが選挙運動の中心であり、そこに有権者がどう反応するかという今回のテーマは、その投稿を「受け取った側」の行動を整理したものです。

Q. 家族や友人とのLINEグループで候補者の投稿をシェアしても大丈夫ですか。
A. LINEなどのメッセージアプリでの共有は「電子メールを利用する方法」ではなく「ウェブサイト等を利用する方法」に分類されるため、18歳以上の有権者同士であれば、家族に限らず友人・知人宛てのグループでも選挙運動期間中のシェアは合法です(一方、キャリアメールやGmailなどの電子メールで転送すると、候補者や政党等以外は禁止されているため注意が必要です)。ただしグループの中に18歳未満のメンバーがいて、その人が転送・拡散する側に回ると話が変わってくるため、メンバー構成によっては注意が必要です。

Q. 「いいね」を大量に押すと選挙運動費用の規制に引っかかりますか。
A. 「いいね」を押す行為自体に金銭のやり取りが発生しない限り、選挙運動費用の規制対象にはなりにくいと考えられます。ただし組織的に「いいねを押してください」と依頼して謝礼を渡すような仕組みを作った場合は、別の観点から問題になり得るため、そうした運用は避けるべきです。

Q. 投票日当日、候補者の過去の投稿に「いいね」を押すのはどうですか。
A. 過去の投稿であっても、投票日当日に反応することで特定候補への支持表明とみなされるリスクはゼロではありません。マトリクス表でも触れた通り、投票日当日は最も慎重な判断が求められる場面ですので、候補者名の入った投稿への反応は控えめにしておくのが無難です。

Q. リポストするときに自分のコメントを一言添えたら、扱いは変わりますか。
A. 変わります。単純な無言のリポストと、自分の言葉で応援コメントを添えたリポストとでは、後者の方がより能動的な意思表示となるため、この記事における「応援コメント」の基準で判断することになります。18歳未満であれば、コメントを添えなくてもリポスト自体がリスクを伴う点は変わりません。

Q. 陣営として、支援者に行動の線引きをどう周知すればよいですか。
A. 口頭での説明だけに頼らず、この記事のようなマトリクス表を印刷して配る、あるいはボランティア用のグループチャットにピン留めしておくといった形で、誰でもいつでも確認できる状態にしておくのが効果的です。特に若年層のボランティアが多い陣営では、年齢による線引きを繰り返し周知することが欠かせません。


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まとめ

「いいね」「シェア・リポスト」「応援コメント」は、同じSNS上の指先の動作でありながら、行う人の年齢や行うタイミングによって合法・違法が入れ替わります。18歳以上が選挙運動期間中に行う分には基本的にどれも問題になりませんが、18歳未満はシェアやコメントで違法となりやすく、投票日当日は候補者名を含む発信そのものが禁止されます。陣営としては、この行為別・場面別の整理を関係者全員で共有しておくことが、トラブルを未然に防ぐ最も確実な方法です。

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