出馬を考え始めると、必ず出てくるのが供託金です。市議選なら30万円。
「落ちたら没収」と聞いて、30万円を捨てる覚悟が要ると身構える方が多くいらっしゃいます。
結論から言うと、市議選・町村議選では、供託金が没収されるラインはかなり低いです。本気で選挙をやった人が引っかかることは、あまりありません。
桁が変わるのは、首長選です。 この記事では、そのからくりを整理します。
いくら供託するのか
立候補の届出をするとき、供託を証明する書類を出します(公職選挙法92条)。
| 選挙 | 供託金 |
|---|---|
| 町村議会議員 | 15万円 |
| 市区議会議員 | 30万円 |
| 指定都市議会議員 | 50万円 |
| 町村長 | 50万円 |
| 都道府県議会議員 | 60万円 |
| 市区長 | 100万円 |
| 指定都市市長 | 240万円 |
| 都道府県知事 | 300万円 |
選挙が終わって効力が確定すれば、原則として返ってきます。 一定の得票に届かなかったときだけ没収されます(同93条)。
返ってくるかを決めるのは、順位ではありません
ここを誤解している方がよくいらっしゃいます。
当落は関係ありません。 落選しても、一定の票を取っていれば返ってきます。逆に言えば、当選すれば当然返ってきます。
判定に使うのは得票数です。基準になる数を「供託物没収点」と呼びます。
| 選挙 | 没収点 |
|---|---|
| 議員の選挙(市議・町村議・県議など) | 有効投票総数 ÷ 議員定数 ÷ 10 |
| 首長の選挙(市長・町村長・知事など) | 有効投票総数 ÷ 10 |
この2つの式の違いが、すべてです。

実際に計算すると、こうなります
有効投票総数が40,000票の自治体を例にします。
市議選(定数30)の場合
40,000 ÷ 30 ÷ 10 = 約133票
133票です。 30万円が戻るかどうかの分かれ目が、133票。
同じ自治体の市長選の場合
40,000 ÷ 10 = 4,000票
4,000票です。 同じ有権者を相手にしていて、ラインが30倍違います。
| 市議選(定数30) | 市長選 | |
|---|---|---|
| 供託金 | 30万円 | 100万円 |
| 没収ライン | 約133票 | 4,000票 |
議員選挙は定数で割るからです。 30人が当選する選挙で、当選者の10分の1に届かないというのは、相当なことです。
町村議選ならもっと低くなります。有効投票6,000票・定数12なら、6,000 ÷ 12 ÷ 10 = 50票。
「落ちたら没収される」という不安の大部分は、議員選挙に関する限り、実態より大きいとお考えいただいて構いません。
※端数の扱いは自治体によって案内が異なることがあります。ご自身の選挙区の正確な数字は、必ず選挙管理委員会にご確認ください。
このラインを下回ると、公費負担も受けられません
ここが、いちばん見落とされているところです。
供託物没収点に達しなかった候補者は、選挙運動用自動車・ポスター・ビラの公費負担を受けられません。 かかった費用は、全額が自己負担になります。
つまり先ほどの133票というラインは、「30万円が戻るかどうか」だけの話ではありません。車両代・燃料代・運転手の費用・ポスターの作成費まで、まるごと自分で払うかどうかの分かれ目でもあります。
| 没収点に | 供託金 | 公費負担 |
|---|---|---|
| 達した | 返ってくる | 受けられる |
| 達しなかった | 没収 | 受けられない(全額自己負担) |
公費で借りたつもりの車が、後から全額請求されるということです。金額としては、供託金より公費負担のほうが大きくなることも珍しくありません。
とはいえ、繰り返しになりますが議員選挙のラインは低いです。過度に恐れる必要はありません。怖いのは首長選のほうだとお考えください。
もうひとつのライン:法定得票数
供託金が戻るラインとは別に、当選するために最低限必要な得票数があります。これを法定得票数といいます。
| 選挙 | 法定得票数 |
|---|---|
| 議員の選挙 | 有効投票総数 ÷ 議員定数 ÷ 4 |
| 首長の選挙 | 有効投票総数 ÷ 4 |
没収点の2.5倍です。
先ほどの例で言えば、市議選の法定得票数は 40,000 ÷ 30 ÷ 4 = 約333票。
つまり、こうなります。
| 得票 | どうなるか |
|---|---|
| 133票未満 | 供託金が没収される |
| 133〜333票 | 供託金は戻るが、票数では当選できない |
| 333票以上 | 当選圏(あとは順位次第) |
首長選では、これが現実に起きています
2017年11月26日の市川市長選挙では、5人の新人が立候補し、最多得票の候補者が28,109票を取りました。
しかし法定得票数は29,770票。1,661票足りませんでした。
誰も当選せず、再選挙になっています。トップを取っても当選できない、というのはこういうことです。
首長選は「有効投票の4分の1」が必要です。候補者が5人に分かれると、トップでも25%に届かないことが起こります。
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町村議選は、2020年12月から供託金が必要になりました
令和2年6月の公職選挙法改正で、町村の選挙にも供託金が導入されました(同年12月施行)。町村議会議員15万円、町村長50万円です。
それまで町村議選には供託金がありませんでした。負担が増えたように見えます。
ただし、同じ改正で選挙公営が拡大しています。
| 改正で公費負担の対象に加わったもの |
|---|
| 選挙運動用自動車の使用 |
| 選挙運動用ビラの作成 |
| 選挙運動用ポスターの作成 |
| 選挙運動用通常葉書の郵送 |
町村議選でも、選挙カーが公費で借りられるようになったということです。
15万円を預ける代わりに、車両代・燃料代・運転手の費用に公費が入る。多くの場合、差し引きでは軽くなっています。 しかも供託金は、票さえ取れば返ってきます。
公費で何がどこまで賄えるかは選挙カーの公費負担、実際いくら戻る?にまとめました。上限額があること、看板は対象外であることは、予算を組む前に押さえてください。
供託金は、自動では戻ってきません
意外と知られていない実務です。
選挙と当選の効力が確定した後、供託書が返ってきます。 そのうえで、供託所(法務局)へ自分で取戻しを請求します。
黙っていて口座に振り込まれる、という性質のものではありません。手続きの主体は候補者本人です。
選挙が終わった直後は、事務所の片付け、収支報告書の作成、公費の申請と、やることが重なります。そこに供託金の取戻しも入るとお考えください。手順と時期は選挙管理委員会にご確認ください。
供託金以外に、何にお金がかかるか
供託金は「預けるお金」で、条件を満たせば戻ります。戻らないのは、それ以外の実費のほうです。
えらぶカーでお受けしている範囲では、次のとおりです。
| 内容 | 料金(税別) | 公費 |
|---|---|---|
| 選挙期間の車両 | 公費+198,000円〜(時期により変動) | 一部対象 |
| 政治活動・月額プラン | 70,000円 / 月〜 | 対象外 |
| 看板(デザイン40,000円+4面印刷80,000円) | 120,000円 | 対象外 |
| 看板セット(買い切り・税込) | 327,800円 | 対象外 |
| 看板・音響フルセット(買い切り・税込) | 438,000円 | 対象外 |
| ポスターデザイン | 40,000円 / 枚 | 印刷は一部対象 |
看板は公費の対象外です。 供託金30万円は戻る可能性が高いのに対して、看板の12万円は確実に出ていくお金です。予算の重みが逆であることは、意識しておいて損はありません。
公認をもらうと費用が楽になるのか、という点は政党の公認は取るべきかで整理しています。
ウグイス嬢の報酬も自己負担です。詳しくは選挙の手伝いは無報酬が原則ですをご覧ください。
よくある質問
Q. 供託金は現金でないといけませんか?
現金または国債証書などで供託します。 供託所(法務局)で手続きし、交付された供託書正本を立候補の届出に添えます。
Q. 立候補を取りやめたら戻りますか?
届出をしなかった場合は返還されます。 立候補の届出期間が過ぎた後の取扱いになります。
Q. 没収された供託金はどこへ行きますか?
国政選挙は国庫、地方選挙はその自治体に帰属します。
Q. 無投票当選のときはどうなりますか?
供託金は返ってきます。当選ですので当然です。
ただし選挙カーの公費負担は、扱いが変わります。 無投票になった場合、車両の借上げ・運転手・燃料は「告示日1日分」だけが公費の対象になるのが一般的です。一方、ポスターとビラの作成費は、投票の有無にかかわらず限度額まで対象になります。
7日分を見込んでいた公費が1日分になるということです。無投票の可能性がある選挙区では、ここを頭に入れて予算を組んでください。正確な取扱いは選挙管理委員会にご確認ください。
Q. 供託金が払えない場合、立候補できませんか?
供託は立候補の要件です。 免除の制度はありません。政治団体や後援会からの寄附という形をとる例はありますが、政治資金規正法の扱いが絡みますので、選管と、必要なら専門家にご相談ください。
Q. 結局、30万円は用意すべきですか?
用意してください。 ただし「捨てるお金」ではなく「預けるお金」です。本当に用意すべきなのは、戻ってこない実費のほうです。選挙カー、看板、ポスター、人件費。ここの見積りを先に立てるほうが、現実的です。
選挙カー・看板のご相談を承っています
えらぶカーは、東京・大森を拠点に、選挙カー・街宣車のレンタルと販売を行っています。全国対応です。
| プラン | 料金(税別) |
|---|---|
| 選挙期間プラン | 公費+198,000円〜(時期により変動) |
| 政治活動・月額プラン | 70,000円 / 月〜 |
| 看板デザイン+4面印刷 | 120,000円 |
| 看板セット(買い切り・税込) | 327,800円 |
| 看板・音響フルセット(買い切り・税込) | 438,000円 |
山西が直接担当します。外注に丸投げはしません。
この3つを教えていただければ、お見積りをお出しします。
- どの選挙か(市議選/町村議選/首長選 など)
- 告示日と投票日(未定でも構いません)
- 必要なもの(選挙カー1台/看板だけ/音響だけ など)
2027年春は統一地方選挙です。 供託金の準備と並行して、車両の確保も進めておいてください。日程が発表されてから動くと、全国の候補者と同じ動きになります。「まだ出馬を決めていない」という段階でも構いません。
お電話でもフォームでも承ります。ご連絡先はこのページのいちばん下にあります。