選挙ポスターの品位規定が強化|2025年法改正のポイントと注意点

選挙が近づくと、街中の掲示場に候補者のポスターが一斉に並びます。誰もが目にする機会の多い掲示物であるからこそ、そのデザインや文言には一定の品位が求められてきました。2025年5月、公職選挙法の一部改正によって、この「品位保持」に関する規定がこれまでよりも強化されたことをご存じでしょうか。本記事では、候補者や陣営の担当者に向けて、2025年法改正の概要と、ポスター作成にあたって注意すべき実務的なポイントを整理します。あわせて、2026年に成立したSNS関連の別の改正との違いについても触れていきます。


目次

選挙ポスターとは|基本的な役割と掲示のルール

選挙ポスターは、候補者の氏名や政策、人物像を有権者に伝えるための最も基本的な選挙運動用ツールのひとつです。街頭演説や選挙カーによる連呼行為が「音」で存在を知らせる手段であるのに対し、ポスターは「視覚」で候補者を印象づける役割を担っています。特に選挙期間の序盤、まだ候補者の名前や顔が浸透していない段階では、ポスターの掲示場が有権者との最初の接点になることも少なくありません。

ポスターの掲示については、各選挙管理委員会が指定する「ポスター掲示場」に貼るものと、個人の許可を得た場所(いわゆる自由張り)に貼るものとがあり、それぞれ枚数やサイズ、掲示できる期間に細かなルールが定められています。また、一定の規格を満たすポスターの作成費用については、公費負担(選挙運動費用の一部を自治体が負担する制度)の対象になり得る点も、候補者にとっては実務上重要な知識です。ただし、公費負担の対象範囲や上限額は自治体・選挙の種類によって異なるため、具体的な条件は必ず各選挙管理委員会に確認する必要があります。

選挙の種類によっても、ポスターの位置づけは少しずつ異なります。国会議員選挙、都道府県・市区町村の首長選挙、地方議会議員選挙のいずれであっても、掲示場に貼るポスターという基本構造は共通していますが、掲示場の設置数や候補者一人あたりの掲示枠のサイズなどは選挙区の規模によって変わってきます。初めて選挙に挑む候補者にとっては、こうした基礎的なルールを早い段階で把握しておくことが、その後のポスター準備をスムーズに進める土台になります。

候補者本人の写真使用が原則である理由

ポスターには候補者本人の写真を使用することが一般的です。これは有権者が「誰に投票するか」を判断する材料として、候補者の人物像を正確に伝える必要があるためです。逆に、候補者と直接関係のない画像や、意図が伝わりにくい抽象的なビジュアルばかりを多用すると、有権者の判断材料として機能しにくくなるだけでなく、後述する品位保持の観点からも疑問視されるおそれがあります。

掲示期間と撤去のタイミング

ポスターは選挙期間中だけ掲示できるものではなく、公示・告示から投票日前日までの決められた期間内で掲示し、選挙が終わった後は速やかに撤去することが求められます。撤去が遅れると、選挙管理委員会や近隣住民から指摘を受けることもあるため、陣営内で「誰が」「いつまでに」撤去を行うのかを事前に決めておくと安心です。掲示場の管理自体は自治体が担いますが、自由張りのポスターについては陣営側の責任で管理・撤去を行う必要がある点も覚えておきたいポイントです。


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2025年法改正の概要|品位保持規定が強化された背景

2025年4月2日に公布された法律(令和7年法律第19号)により、公職選挙法の一部が改正され、同年5月2日に施行されました。この改正の中心的なポイントのひとつが、選挙ポスターの品位保持に関する規定の強化です。

背景には、近年の各種選挙において、品位を欠く表現や過激な内容を含むポスター、あるいは候補者本人とは直接関係のない画像・文言を大きく用いたポスターが掲示され、その是非がメディアやSNS上で話題になった経緯があります。特定の選挙や候補者を挙げて論じるまでもなく、こうした事例が繰り返し報じられ、「選挙ポスターという公共性の高い掲示物のあり方」について社会的な問題意識が高まっていたことは、多くの方が実感として共有しているのではないでしょうか。今回の改正は、そうした流れを受けて、ポスターの品位を保つためのルールをより明確にする方向で行われたものと理解されています。

候補者や陣営の立場から見れば、こうした改正は「表現の自由が制限される」というよりも、「選挙という公共の場にふさわしい発信のあり方を、あらためて確認する機会」として捉えるほうが実務的には受け入れやすいかもしれません。ポスターは有権者との信頼関係を築く最初のきっかけになるものですから、品位を保つことは候補者自身の印象を守ることにもつながります。

重要な点として、この改正はあくまで紙媒体である選挙ポスターの掲示を対象とした規定強化であり、SNS上の発信内容そのものを直接規制するものではありません。ポスターとSNSは別々の枠組みで議論されているという整理を、まず押さえておくとよいでしょう。

なぜ「紙のポスター」がまず対象になったのか

選挙ポスターは、選挙管理委員会が管理する掲示場に貼られる、いわば公的な性格を帯びた掲示物です。誰でも閲覧できる場所に一定期間掲示され続けるという特性上、内容に問題があった場合の影響範囲や社会的なインパクトも大きくなりやすいという事情があります。SNSの投稿であれば削除や訂正が比較的容易ですが、掲示済みのポスターを差し替えるには物理的な手間とコストがかかります。こうした特性の違いも、まずポスターの品位保持規定が先行して強化された背景の一つとして考えられます。


改正前と改正後で何が変わったのか

改正前と改正後で、選挙ポスターの扱いがどのように変わったのかを、公表されている範囲でごく簡単に整理すると、以下のようなイメージになります。なお、具体的な審査基準や運用の細部については、法律の条文および各選挙管理委員会の案内に基づく確認が不可欠であり、下表はあくまで大枠の理解を助けるための整理である点にご留意ください。

項目2025年改正前2025年改正後(令和7年法律第19号)
品位保持に関する規定選挙運動全般における品位保持の考え方はあったが、ポスターに特化した規定は相対的に薄かった選挙ポスターの品位保持に関する規定が明確に強化された
規制の対象紙媒体の掲示物が中心紙媒体の掲示物(選挙ポスター)が対象。SNS発信は対象外
問題視される表現の扱い個別の判断に委ねられる部分が大きかった品位を欠く表現・過激な内容への対応がより意識される枠組みに
施行時期2025年5月2日施行

表からも分かるとおり、今回の改正は「何が品位を欠くか」を一つひとつ細かく条文で列挙するようなものではなく、既存の枠組みを強化する形で行われています。そのため、実際にどのような表現やデザインが問題視されるのかについては、選挙管理委員会が示す案内や個別の審査を通じて確認していく必要があります。この記事では断定的な基準をお示しすることができませんので、詳細は必ず各選挙管理委員会にお問い合わせください。


SNSの規制とは別枠|2026年成立の改正公選法・情プラ法との違い

ここで混同しやすいのが、2026年7月13日に成立した改正公職選挙法・改正情プラ法(情報流通プラットフォーム対処法)です。こちらはSNS上の偽情報やなりすまし対策などを明確化するための改正であり、施行は2027年3月1日、2027年春の統一地方選挙から適用される予定とされています。

つまり、2025年の改正は「紙のポスター」の品位保持を強化するもの、2026年の改正は「SNS上の情報流通」への対策を明確化するものという、対象も時期も異なる別枠の改正です。陣営の担当者としては、この2つを混同せず、それぞれの施行時期・対象範囲を分けて理解しておくことが実務上のミスを防ぐポイントになります。SNS選挙運動における注意点については、当ブログの他の記事でも取り上げていますので、あわせてご参照ください。


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候補者・陣営がポスター作成時に気をつけたいポイント

品位保持規定の強化を踏まえ、ポスターを作成する際に候補者・陣営がチェックしておきたい観点を、デザイン、文言、画像の3つの切り口から整理します。あくまで一般的な注意点であり、最終的な適否の判断は選挙管理委員会の審査に委ねられることを前提にお読みください。

デザイン・レイアウトの注意点

候補者名や政策が読み取りにくいほど装飾を優先したデザイン、あるいは選挙とは無関係な演出を過度に強調したレイアウトは、有権者の判断材料としての機能を損なうだけでなく、品位の観点からも疑問を持たれやすい部分です。派手さやインパクトを重視するあまり、掲示物としての本来の目的から離れすぎていないか、一度立ち止まって確認する価値があります。

文言・キャッチコピーの注意点

キャッチコピーや見出しの文言は、有権者に強い印象を残すために工夫を凝らしたくなる部分ですが、過激な表現や他候補・他党を強く攻撃するような言い回しは避けるべきです。ユーモアや強いメッセージ性を狙う場合でも、公共の掲示物にふさわしい表現かどうかという基準で見直す姿勢が求められます。

画像・写真選定の注意点

候補者本人の写真以外の画像を大きく使う場合は、その画像が選挙運動の趣旨とどう結びつくのか、説明がつくものであるかを確認しておく必要があります。有名なキャラクターやパロディ的な演出、意図が伝わりにくい抽象的な写真などは、掲示前の審査で指摘を受ける可能性があるため、早い段階で選挙管理委員会に相談しておくと安心です。

写真の加工についても一定の配慮が必要です。過度な美化加工や、実際の候補者の印象とかけ離れた合成写真は、有権者に誤った印象を与えかねません。証明写真のような硬い雰囲気を避けたいという意図で自然な表情の写真を選ぶこと自体は問題ありませんが、加工の度合いが強すぎると、後になって「本人と印象が違う」という声が出てしまうこともあります。品位保持とは別の観点ではありますが、写真選びの際にはあわせて意識しておきたいポイントです。

記載事項の抜け漏れにも注意

品位の話題に注目が集まりがちですが、氏名や党派名など、法律上記載が必要とされる事項に抜け漏れがないかも合わせて確認しておきたいところです。デザインを重視するあまり必須項目の表記が小さくなりすぎたり、レイアウトの都合で省略してしまったりすると、品位保持とは別の理由で修正を求められることがあります。デザインの見栄えと記載事項の必要性は、どちらも同じ確認作業の中でチェックしておくと効率的です。

実務上よく起こりがちなのが、ポスターのデザインを外部のデザイン会社や印刷業者に発注するケースです。デザイン業者は見栄えの良さやインパクトを重視する傾向がある一方で、公職選挙法上の品位保持の観点までは必ずしも把握していないことがあります。陣営側が「かっこいいから」「目立つから」という理由だけで発注時のブリーフィングを済ませてしまうと、いざ完成したポスターを選挙管理委員会に持ち込んだ段階で、表現の見直しを求められ、印刷のやり直しや掲示開始の遅れにつながることがあります。発注段階で「品位保持規定を踏まえたデザインにしてほしい」という一文を要件に加えておくだけでも、後工程での手戻りをかなり減らすことができます。

また、陣営内に複数のデザイン案が上がってきた場合、最終決定権を持つ人が一人で判断するのではなく、可能であれば選挙経験のあるスタッフや後援会の役員など、複数の視点でチェックする体制を作っておくと、品位の観点での見落としを減らしやすくなります。デザインを決める会議の場で「この表現は選挙管理委員会に確認したほうがよいのでは」という意見が出やすい雰囲気を作っておくことも、地味ながら効果的な工夫です。


ポスター審査・掲示前の確認プロセス

選挙ポスターは、完成してすぐに掲示場へ貼れるわけではありません。多くの選挙管理委員会では、掲示前にポスターの内容や規格(サイズ、記載事項など)を確認するプロセスが設けられています。一般的な流れとしては、まずデザインの案を作成し、選挙管理委員会が公表している規格・記載要件と照らし合わせて確認します。その上で、必要に応じて選挙管理委員会に事前相談や届出を行い、指摘があれば修正した上で印刷・掲示に進む、という段取りになります。

この確認プロセスにかかる時間は、選挙の種類や自治体によって異なります。特に選挙期日が公示・告示されてから掲示開始までの期間は限られているため、ポスターのデザインや印刷は選挙戦がスタートする前、できるだけ早い段階から準備を進めておくことが望ましいでしょう。品位保持の観点で修正が必要になった場合、印刷のスケジュールを圧迫してしまうことも考えられます。余裕を持ったスケジュール管理が、結果的にトラブルを避ける一番の近道です。

なお、公費負担制度を利用してポスターを作成する場合は、対象となる規格や手続きが自治体ごとに定められています。この点も含め、詳細は必ず立候補予定の選挙区を管轄する選挙管理委員会にご確認ください。

初めて立候補する方や、選挙運動の実務経験が少ない陣営の場合、選挙管理委員会への事前相談は「早すぎるかもしれない」と感じるタイミングでも早めに行っておくほうが結果的にスムーズです。デザインの方向性がまだ固まっていない段階であっても、大まかなコンセプトを伝えて感触を確認しておくことで、後になってから大幅な修正を求められるリスクを下げられます。特に選挙が近づく時期は選挙管理委員会への相談も混み合いやすいため、余裕を持った連絡を心がけるとよいでしょう。


SNS上のビジュアルにも同様の配慮を

今回の法改正は選挙ポスターを対象としたものであり、SNS上の発信そのものを直接規制するものではありません。とはいえ、候補者のプロフィール画像やヘッダーバナー、投稿に使う画像なども、有権者が候補者の人物像を判断する材料になる点では、紙のポスターと同じ役割を担っています。ポスターで求められる品位への配慮を、SNS上のビジュアルにもある程度反映させておくことは、法的な義務ではないにしても、実務上望ましい姿勢といえるでしょう。

特に、ポスター用に制作した写真や素材をSNSのプロフィール画像やバナーに転用するケースは多く見られます。その際、ポスター用に確認済みのデザインをそのまま使うのか、SNS向けに別の演出を加えるのかによって、印象が大きく変わることもあります。SNS選挙運動における画像・投稿内容の注意点については、当ブログのSNS選挙運動シリーズの記事でも詳しく解説していますので、ポスター制作と並行して確認しておくと、陣営全体としての情報発信に一貫性を持たせやすくなります。


よくある質問

Q. 2025年の法改正で、具体的にどのような表現がNGになったのですか。

A. 法改正では品位保持に関する規定が強化されましたが、「どの表現が具体的にNGか」という細かな基準までは条文上明確に列挙されているわけではありません。個別の表現やデザインの適否については、各選挙管理委員会の案内や審査を通じて確認する必要があります。判断に迷う場合は、早めに選挙管理委員会へ相談することをおすすめします。

Q. すでに過去の選挙で使っていたポスターのデザインを、そのまま今回も使っても問題ないですか。

A. 過去に問題なく掲示できたデザインであっても、2025年の改正以降は品位保持の観点での確認が強化されている可能性があります。同じデザインを再利用する場合でも、あらためて選挙管理委員会に確認してから進めるほうが安全です。

Q. SNSのプロフィール画像も選挙管理委員会の審査対象になりますか。

A. 今回の法改正はあくまで紙媒体である選挙ポスターを対象としたものであり、SNS上のプロフィール画像やバナーそのものが同じ審査プロセスの対象になるわけではありません。ただし、有権者に与える印象という点ではポスターと同様の役割を持つため、品位への配慮を意識しておくことは実務上有効です。2026年に成立した改正公選法・改正情プラ法もSNS上の偽情報対策が中心であり、施行は2027年3月1日からとされているため、現時点でSNS画像そのものが選挙管理委員会の直接審査に組み込まれているわけではない、という理解で差し支えありません。

Q. ポスターのデザインが決まった後、選挙管理委員会にはどのタイミングで相談すればよいですか。

A. デザインが完全に固まってからではなく、コンセプトの段階から早めに相談しておくことをおすすめします。特に品位保持の観点で判断に迷う要素がある場合、印刷後に修正を求められると時間もコストもかかってしまいます。選挙期日が近づくほど選挙管理委員会への相談も集中しやすいため、余裕を持った日程で連絡を取るとよいでしょう。

※本記事は一般的な情報を紹介したものです。具体的な審査基準・取り扱いは、各選挙管理委員会に必ずご確認ください。


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まとめ

2025年5月に施行された公職選挙法改正により、選挙ポスターの品位保持規定が強化されました。これは紙媒体のポスターを対象とした改正であり、2026年に成立したSNS関連の改正(施行は2027年3月1日、2027年春の統一地方選挙から適用)とは対象も時期も異なる、別枠の改正である点をまず押さえておく必要があります。

候補者・陣営は、デザイン・文言・画像選定のそれぞれの観点から品位保持を意識してポスターを準備し、コンセプトの段階から早めに選挙管理委員会へ相談しておくことで、印刷・掲示のスケジュールを圧迫するリスクを避けやすくなります。SNS上のプロフィール画像やバナーについても、法的な義務ではないものの、同様の品位への配慮を心がけておくと、陣営全体の発信に一貫性が生まれます。

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