「議員を減らせ」という声は、選挙のたびに聞こえてきます。ですが、日本の議員定数はずっと減り続けてきたわけではありません。衆議院の定数は戦後しばらく人口の増加に合わせて増え、1986年の512をピークに、1990年代から減らす時代に入りました。そして2026年10月29日、自民党・日本維新の会・国民民主党の3党が、衆議院の比例代表を31削減し、比例の議席の計算方法をドント式から修正サンラグ式に変えることで合意しました。この記事では、衆議院・参議院・地方議会の定数削減の歴史と、いま議論されている計算方法の違いを、グラフと計算例でまとめます。
※えらぶカーは所属や党派に関わらず、同じ条件でお受けしています。この記事も特定の政党・陣営の主張を支持するものではありません。内容は2026年11月1日時点の情報です。
結論:衆院の定数は「増えてから減ってきた」
| 時期 | 衆議院の定数 | 流れ |
|---|---|---|
| 1890年 | 300 | 第1回総選挙 |
| 1947年 | 466 | 戦後最初の中選挙区制の総選挙 |
| 1986年 | 512(ピーク) | 都市部の人口増に合わせて増やしてきた |
| 1996年 | 500 | 小選挙区比例代表並立制を導入 |
| 2017年〜 | 465 | 現在の定数(小選挙区289・比例176) |
| 3党合意案 | 434 | 比例を31削減して145に(未成立) |

当初はどのくらい?戦前から戦後の466まで
1890年の第1回衆議院議員総選挙の定数は300でした。その後、選挙権の拡大や人口の増加に合わせて定数が増え、1925年の普通選挙法で466になりました。戦後、1947年の総選挙から中選挙区制(1つの選挙区から3〜5人程度を選ぶ制度)が採られ、このときの定数も466です。当時は沖縄と奄美群島が日本の施政権の外にあり、選挙は行われていませんでした。
人口の増加に合わせて増えた時代(1947〜1986年)
戦後の高度成長期には、地方から都市へ人が移り、選挙区ごとの「一票の重み」の差が広がりました。当時は、人口が減った地方の定数を減らすのではなく、人口が増えた都市部の定数を増やすことで差を縮めるのが基本でした。そのため、総定数は増えていきます。
| 適用された総選挙 | 定数 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 1947年 | 466 | 戦後最初の中選挙区制 |
| 1954年〜 | 467(+1) | 奄美群島の返還 |
| 1967年 | 486(+19) | 大都市の人口増に合わせた是正 |
| 1970年 | 491(+5) | 沖縄の国政参加(返還前の特別措置) |
| 1976年 | 511(+20) | 人口に合わせた是正 |
| 1986年 | 512(+1) | 「8増7減」の是正。戦後のピーク |
減らす時代へ:並立制の導入から465まで(1993〜2017年)
流れが変わるのは1990年代です。1993年の総選挙では「9増10減」で511に1減。そして1994年の政治改革で、中選挙区制をやめて小選挙区比例代表並立制が導入されました。1996年の総選挙から、小選挙区300・比例代表200の500になります。その後は、行財政改革や政治改革を背景に、段階的に減らされてきました。
| 適用された総選挙 | 定数 | 内訳 | 主な理由 |
|---|---|---|---|
| 1993年 | 511(−1) | 中選挙区 | 「9増10減」の是正 |
| 1996年 | 500 | 小選挙区300・比例200 | 小選挙区比例代表並立制の導入 |
| 2000年 | 480(−20) | 小選挙区300・比例180 | 比例を20削減 |
| 2014年 | 475(−5) | 小選挙区295・比例180 | 一票の格差是正の「0増5減」 |
| 2017年 | 465(−10) | 小選挙区289・比例176 | 小選挙区6減・比例4減 |

2022年には、都道府県ごとの小選挙区の数を人口に比例して配るアダムズ方式による区割りの見直し(いわゆる「10増10減」)が行われましたが、総定数は465のまま変わっていません。アダムズ方式は「都道府県にいくつ小選挙区を配るか」の計算方法で、この記事の後半で扱う「比例の議席を政党にどう配るか」(ドント式・サンラグ式)とは別のものです。
参議院の定数はどう変わってきた?
参議院は、1947年の発足時が250(地方区150・全国区100)でした。沖縄返還で252になり、1982年に全国区が比例代表に変わっています。2000年の法改正で10削減され、2001年と2004年の2回に分けて242に。その後、2015年に鳥取・島根、徳島・高知を一つの選挙区にする「合区」が導入され、2018年の法改正では一票の格差の是正などを理由に6増(2019年と2022年の2回に分けて248)となりました。比例の「特定枠」もこのときに作られています。
| 時期 | 参議院の定数 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 1947年 | 250 | 発足(地方区150・全国区100) |
| 1970年〜 | 252(+2) | 沖縄の国政参加 |
| 2001年・2004年 | 242(−10) | 2000年の法改正で削減 |
| 2019年・2022年 | 248(+6) | 2018年の法改正。合区への対応など |
地方議会の定数削減:議員定数は約23年でほぼ半分に
定数削減がいちばん大きく進んだのは、実は地方議会です。総務省の資料によると、地方議会の議員定数(都道府県議会と市区町村議会の全国合計)は、1999年末の63,023人から、2022年末には32,447人へと、約23年でほぼ半分(48.5%減)になっています。

最大の理由は平成の大合併です。市町村の数が大きく減り、そのぶん議会の数も議員の数も減りました。制度の面では、地方議会の定数はもともと人口に応じて法律で決まっていましたが、2003年1月から各議会が条例で定数を決めるしくみ(法律で上限あり)に変わり、2011年8月施行の地方自治法改正で上限も撤廃されました。いまは、それぞれの議会が自分たちで定数を決めています。そのため、統一地方選の前になると「次の選挙から定数を2削減」といった条例改正が各地で議論されます。
地方選に出る方にとって、定数が減れば当選できる人数が減り、選挙戦が厳しくなる可能性があります。実際の当選ラインは候補者の数や投票率でも変わりますが、同じ得票でも、定数が減れば落選することがあります。自分の議会で定数削減が議論されていないか、次の選挙の定数がいくつかは、早めに確認してください。
いまの議論:衆院の比例31削減と計算方法の変更
2025年10月の自民党と日本維新の会の連立合意から、衆議院の定数削減の議論が本格化しました。主な流れは次のとおりです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2025年10月 | 自民・維新が連立合意。衆院定数の1割削減を目標に掲げる |
| 2025年12月 | 与党が法案を提出。協議会で1年以内に結論が出なければ、小選挙区25・比例20の計45を削減する内容 |
| 2026年6月 | 自民・維新が新たな法案を提出。結論が出なければ比例代表を45削減する内容に変更。6月末に衆院の特別委員会で審議入り(野党は欠席)。成立はしていない |
| 2026年7月 | 与野党が、選挙制度改革とセットで9月末までに結論を出すことで合意 |
| 2026年8月 | 衆院選挙制度協議会の座長試案。比例の配分にサンラグ式の検討、定数は「適切な規模の削減」と明記 |
| 2026年9月末 | 協議会が結論の目標を10月末に延ばす |
| 2026年10月29日 | 自民・維新・国民の3党が、比例31削減などで正式合意。今国会に法案を共同提出する方針 |
10月29日の3党合意の主な中身は次のとおりです。
- 定数を31削減し、削減は比例代表で行う(465→434、比例は176→145)
- 比例の議席の計算方法を、ドント式から修正サンラグ式に変える
- 比例の中国ブロックと四国ブロックを統合する(11ブロック→10ブロック)
- 重複立候補した人が比例で復活当選するための最低ラインを、立候補した小選挙区の有効投票総数の10分の1(10%)から6分の1(約16.7%)に引き上げる
- 複数の政党が比例で統一名簿を出せるようにする
- 比例名簿の候補者が足りなくなった場合は、他党に議席を回さず欠員とする。あわせて、比例候補者を立てやすくするため供託金の没収基準を見直す
- 比例で当選した議員が他党に移った場合の、政党交付金の扱いを検討する
31という削減幅は、2015年から2030年にかけての人口の減少率の推計(約6.7%)を参考に算出されたと説明されています。ただし、人口の減少と議員定数をどう結びつけるべきかについては意見が分かれています。当初目標の1割(約46)には届いていません。一方、公明党や共産党、参政党など複数の野党は反対しており、幅広い政党の合意による見直しにはなっていません。法案はまだ成立しておらず、ブロックごとの削減数や施行時期は、今後の法案で確認が必要です。
ドント式・サンラグ式・修正サンラグ式の計算方法
比例代表では、各政党の得票に応じて議席を配ります。ただ、得票をそのまま比例させると「3.84議席」のように端数が出るので、整数にするための計算方法が必要です。それがドント式やサンラグ式です。やり方は3つとも同じで、違うのは割る数だけです。
- 各党の得票を、決められた数(除数)で順番に割る
- 出てきた答え(商)を、全政党まとめて大きい順に並べる
- 定数の数だけ、上から順に議席を配る
| 方式 | 割る数 | 特徴 |
|---|---|---|
| ドント式(現在) | 1、2、3、4… | 大きい政党がやや有利になりやすい |
| サンラグ式 | 1、3、5、7… | 得票の割合に近い配分になりやすい。小さな政党も議席を取りやすい |
| 修正サンラグ式(合意案) | 1.4、3、5、7… | サンラグ式の最初だけ1.4で割る。ごく小さな政党の1議席目のハードルを上げる |
計算例:定数8、4つの政党の場合
1つのブロックで8議席を配る、という仮定の例です(実際の衆院選とは異なります)。得票の合計が100万票で、A党48万票、B党26万票、C党18万票、D党8万票だったとします。得票どおりに分けると、A党3.84、B党2.08、C党1.44、D党0.64議席です。表の数字は得票(万票)を割った商で、太字が議席を得たものです。
ドント式(1、2、3、4、5で割る)
| ÷1 | ÷2 | ÷3 | ÷4 | ÷5 | 議席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A党 | 48.0 | 24.0 | 16.0 | 12.0 | 9.6 | 5 |
| B党 | 26.0 | 13.0 | 8.67 | 6.5 | 5.2 | 2 |
| C党 | 18.0 | 9.0 | 6.0 | 4.5 | 3.6 | 1 |
| D党 | 8.0 | 4.0 | 2.67 | 2.0 | 1.6 | 0 |
8番目はA党の9.6で、C党の2議席目(9.0)はわずかに届きません。得票どおりなら3.84議席のA党が、5議席を取っています。
サンラグ式(1、3、5、7、9で割る)
| ÷1 | ÷3 | ÷5 | ÷7 | ÷9 | 議席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A党 | 48.0 | 16.0 | 9.6 | 6.86 | 5.33 | 4 |
| B党 | 26.0 | 8.67 | 5.2 | 3.71 | 2.89 | 2 |
| C党 | 18.0 | 6.0 | 3.6 | 2.57 | 2.0 | 1 |
| D党 | 8.0 | 2.67 | 1.6 | 1.14 | 0.89 | 1 |
2つ目以降を3、5、7と大きな数で割るので、議席を重ねるほど商が早く小さくなります。そのぶん、D党の1議席目(8.0)が上位に入りました。
修正サンラグ式(1.4、3、5、7、9で割る)
| ÷1.4 | ÷3 | ÷5 | ÷7 | ÷9 | 議席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A党 | 34.29 | 16.0 | 9.6 | 6.86 | 5.33 | 4 |
| B党 | 18.57 | 8.67 | 5.2 | 3.71 | 2.89 | 2 |
| C党 | 12.86 | 6.0 | 3.6 | 2.57 | 2.0 | 2 |
| D党 | 5.71 | 2.67 | 1.6 | 1.14 | 0.89 | 0 |
最初を1.4で割るので、D党の1議席目は8.0から5.71に下がり、C党の2議席目(6.0)に届きませんでした。

この計算例では、ドント式でA党が5議席、サンラグ式でD党が1議席、修正サンラグ式ではA党4議席・C党2議席という結果になりました。修正サンラグ式は、得票の少ない政党が最初の1議席を取る条件を厳しくしつつ、2議席目以降はサンラグ式と同じ計算をする方式です。ただし、どの政党に有利になるかは、ブロックの定数や各党の得票の分布によって変わります。
賛成と反対、何が論点になっている?
定数削減と計算方法の変更には、さまざまな意見があります。主な論点を整理します。
| 削減・見直しに前向きな意見 | 慎重・反対の意見 |
|---|---|
| 人口が減っているのだから、議員も減らすべき | 人口あたりの国会議員の数は、主要国と比べて多くないという指摘がある |
| 政治家が自ら「身を切る」姿勢を示すべき | 削減で浮く経費は国の予算全体から見ればわずか。議員の数より中身の議論を |
| 修正サンラグ式で、削減しても中規模の政党に配慮できる | 比例を減らすと、少数意見が国会に届きにくくなる |
| 比例復活の基準引き上げで、小選挙区で大差で負けた人の復活当選を減らせる | 選挙制度の根本的な見直しを先にすべきで、数字ありきの削減は順番が逆 |
| 議論を長引かせず、期限を決めて結論を出すべき | 選挙のルールは、与党だけでなく幅広い政党の合意で変えるべき |
どの立場に立つかは、国会に何を期待するかで変わります。法案がどう審議されるか、今後の国会の議論を見守る必要があります。
地方選に出る人は、何に気をつければいい?
今回の3党合意は衆議院の比例代表の話です。参議院や地方議会の定数、選挙のしくみが自動的に変わるわけではありません。地方議会の選挙(市議選・町村議選など)では候補者個人に投票し、得票の多い順に当選者が決まります。ドント式やサンラグ式で議席を配ることはありません。
ただし、国政で「議員を減らす」流れが強まると、地方議会でも定数削減の議論が起きやすくなります。2027年の統一地方選に出る方は、自分の議会の次の選挙の定数と、前回の最下位当選者の得票を確認しておくと、目標の票数が見えてきます。統一地方選の日程は2027年統一地方選挙はいつ?にまとめています。
よくある質問
Q. 衆議院の定数がいちばん多かったのはいつですか?
1986年の総選挙から適用された512が戦後のピークです。1993年に511、1996年の並立制導入で500になり、その後は減り続けています。
Q. ドント式はほかの選挙でも使われていますか?
参議院の比例代表(政党名でも候補者名でも投票できる方式)でもドント式が使われています。今回の3党合意で計算方法を変えるのは衆議院の比例代表で、参議院は対象になっていません。
Q. アダムズ方式とサンラグ式は同じものですか?
違います。アダムズ方式は、衆議院の小選挙区の数を都道府県に配るための計算方法です。サンラグ式やドント式は、比例代表の議席を政党に配るための計算方法です。
Q. 比例31削減はいつから適用されますか?
2026年11月1日時点では法案は成立していません。適用される時期は、今後提出される法案の内容と国会での審議によって決まります。
まとめ
- 衆議院の定数は1890年の300から始まり、戦後は466から増えて1986年に512がピーク
- 1996年の並立制導入で500、その後480→475→465と段階的に削減
- 地方議会の議員定数は平成の大合併などで、約23年で約6万3千人から約3万2千人に
- 2026年10月29日、自民・維新・国民が比例31削減(465→434)と修正サンラグ式への変更で合意。法案はこれから
- ドント式・サンラグ式・修正サンラグ式の違いは「割る数」。修正サンラグ式は最初だけ1.4で割り、ごく小さな政党の1議席目を難しくする
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